ラン・ランの演奏が、人々を魅了する秘密

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先週の土曜日、ピアノ界のスーパースターとの呼び声も高い
ラン・ランのピアノリサイタルに行ってまいりました。

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正直、私の好みの演奏家ではまったくないのですが...
一度はきちんと生の演奏を聴いておくべし、と思い、
清水の舞台から飛び降りるような気持ちでお高いチケットを購入しました。

サントリーホールの大ホール約2000席はほぼ満席。
その人気のほどがうかがえます。

昨年1月は本人の健康上の理由で来日が急遽キャンセルとなり、3年ぶりの来日。客席のあちこちで、この日を待っていた熱狂的なファンの方達の盛り上がりの様子も伝わってきました。

肝心の演奏は?というと、いい意味で予想を裏切るすごい演奏で、行った価値は充分ありました。
スパースターという表現が違和感ない、ぶっとんだ演奏で、実に面白かったです。
まさに、That's Entertainment!
クラシックを超越しています!

前半はモーツァルトのピアノソナタ3曲。
よりによって3曲ともか...
これが正直な演奏会前の気持ちで、まったく興味が持てませんでした。
ところが、このモーツァルトが驚くほど良かったのです。
演奏を聴きながら、大昔観た「アマデウス」という映画を思い出しました。
この映画の中で登場するモーツァルトは(相当ハチャメチャな人格の人間として描かれていましたが)、天才ゆえの自由さと奔放さに溢れた演奏がすごく印象的でした。
ラン・ランの演奏するモーツァルトのピアノソナタは、そんな天才モーツァルト像を彷彿とさせる、実に大胆な解釈、魂の開放を感じる演奏でした。
音楽の躍動感が本当に素晴らしかったです。

それに対して、楽しみにしていた、ショパンのバラード4曲はと言うと...
んーこちらは評価が実に難しいです。
良く言えばダイナミック。悪く言えば、派手な演出が、まるで三文芝居みたい。
でも、こういうことをステージで出来るのは、やはり世界が認める一流ピアニストだからなのだと思いました。中途半端なピアニストでは、とうてい真似できないです。


バラードの1番。ドラマティックでとても好きな曲です。
ドラマティックすぎて、心臓発作を起こしかねないのでラン・ランの演奏はご用心です。
(失礼ながら)最後のpからfffの半音階進行に以降する間合いがかなりゆったりめで、かつあまりに劇的な変化に、(心の準備をしていないと)とんでもなくビックリする羽目になります。
最前列の年配のご夫人が、(この展開をご存知なかったのか?)あまりにビックリして身体がのけぞっていらっしゃる様子が目に飛び込んできて、あまりの可笑しさに笑いをかみ殺すのにひと苦労。
しかも、弾き終わりのポーズ決めの瞬間、ピアノに何かがぶつかった"コツン"という音が...
(・ω・?)
もう、なんとか声は出さないように、顔だけ笑ってました。
完璧な演奏でも、ライブで何が起こるかはわかりません。

ショパンのバラードはいずれも名曲なので、どうしても名演奏と呼ばれる音源が先入観としてあって、
彼の演奏を素直に受け入れ難いのも事実。
でも、そういう偉大なピアニストの演奏と比べてどうということではなく、
エンターテイメントとしてこのライブを見た時に、一流だと思いました。
ステージの迫力は半端ないです。
彼は孤高の芸術家ではなく、聴衆を意識し意図して魅了する芸人です。
顔の表情、手の動き、ペダルを自在に扱う脚の動き...全身を使ったパフォーマンスで、音楽の力を聴衆に訴えかけます。
ピアノから聞こえてくる音色は、もはやクラシックというジャンルにおさまる部類なのか、私には不明です。
ですが...その作曲者は間違いなくモーツァルトであり、ショパンなのです。


日時:2014年4月26日(土) 19:00 開演

【曲目】
モーツァルト
・ピアノ・ソナタ第5番 ト長調 K283
・ ピアノ・ソナタ第4番 変ホ長調 K282
・ ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 K310
== 休憩 ==
ショパン
・ バラード第1番 ト短調 op.23
・ バラード第2番 ヘ長調 op.38
・ バラード第3番 変イ長調 op.47
・ バラード第4番 ヘ短調 op.52

アンコール
・ショパン:華麗なる大円舞曲
・ポンセ:間奏曲
・モーツァルト:トルコ行進曲
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このページは、Nancyが2014年4月28日 16:07に書いたブログ記事です。

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