若手女性ピアニストの動画で、比較すると非常に面白いものを見つけました。
どちらも昨年のライブ録画です。
同じ曲なのに、こうも違う演奏の2人。
実は2人とも1987年生まれ(現在27歳)で同じ歳なのです。
1人は中国出身のYuja Wang(ユジャ・ワン)。
もう1人はグルジア出身のKhatia Buniatishvili(カティア・ブニアティシヴィリ)。
先の映像は、昨年来日した際のトッパンホール(2013/04/17)で収録されたYuja Wangのリサイタルです。
私はその3日後(4/20)、彩の国さいたま芸術劇場ので同じプログラムを聴きました。
ドレスもその時と同じものです。まずもってこの衣装に度肝を抜かれ、圧倒的な演奏で私をノックダウンしました。いっそ武器を片手にステージに現れてくれたら良かったのに...なんて(笑)
それからKhatia Buniatishvili。この方はまたすごい美人で、豊満な肉体美に目が釘付けになります。日本で大掛かりなツアー演奏会は組んでいないので、それほど知名度は高くないかもしれませんが、海外ではかなり活躍している若手ピアニストで、この動画は、2013年のヴェルビエ音楽祭(Verbier Festival)での演奏です。スイスで毎年行われているヴェルビエ音楽祭は、若手の演奏家が多数招待されていて、かつてユジャ・ワンも演奏しています。そんなカティア・ブニアティシヴィリとの出会いは、YouTube上。シューマンのピアノコンチェルトの映像を初めて見て衝撃を受け、以来彼女の活動を注視しています。かなり癖の強い演奏で、どちらかというとあまり好きではないのですが...
でも、指に刺さった刺のように、とても気になるピアニストなのです。
演奏は似ても似つかないけれど...
2人とも、女性であることを武器にたたかう、格闘家のように見えませんか?
2014年10月アーカイブ
ダニール・トリフォノフの横浜みなとみらいホールでのリサイタルに行ってまいりました。
今回の来日公演では、2つの異なるプログラムが用意されています。
一つは前半にバッハ/リストの「幻想曲とフーガ」とベートーヴェン「ピアノソナタ 第32番 Op.111」、後半はリストの「超絶技巧練習曲集」12曲中の10曲の演奏。
もう1つは、今回私が聴いてきたプログラム、ストラヴィンスキーの「イ調のセレナード」、ドビュッシー「映像第1集」、ラヴェルの「鏡」を前半に、後半は先のプログラムと共通のリストの「超絶技巧練習曲集」全12曲のうち10曲の構成です。
それにしても少々通が好むような選曲に思える今回のプログラム。
昨年の2013年6月14日に行われたオペラシティでの演奏会では、スクリャービン「ピアノ・ソナタ第2番」、リスト「ロ短調ソナタ」を前半にもってきて、後半はショパンの24の前奏曲をチクルスで組み込むという、華やかなプログラムだったのに比べると、かなり地味な印象です。
正直、友人に誘われるまで、半ば見送ろうと思っていた今回の演奏会。
私ですらそう思うのですから、やはりなかなか一般うけしない曲目で集客には苦労しているのが伺えます。
聴き所は、やはり後半のリストの超絶技巧練習曲集。
(当初12曲演奏の予定だったようです。曲順は1,8,3,4,5,2,9,10,11,12。)
演奏順は一部入れ替えています。彼が最良と思える演奏順を追求した結果だそうで、
「この組み合わせで演奏をすることで、作品全体を通して、緊張感を保ち続けるだけでなく、それぞれの練習曲を調性において、かつ作品の個性を活かしながら結びつけ、一つの大きな物語として紡ぐことができると感じています。」とインタビューにありました。
さて、今年最大の台風で世の中が騒いでいるなか、コンサート会場に向かいました。
今日も遠くに見えるのはFAZIOLIのピアノです。
前半のストラヴィンスキーのイ調のセレナードは、初めて聴きました。
したがって、なかなかうまく言えません...
「火の鳥」や「ペトルーシュカ」とはまったく違う作風の曲です。
ドビュッシーの映像を彼が弾くと、まさに印象派の絵画のような音の色彩に溢れた美しい世界。
ドビュッシーやラヴェルはうっとり。ピアニッシモの速いスケールでこんな音の微妙な表現が出来る人を、私は他に知りません。
前半のストラヴィンスキー、ドビュッシー、ラヴェルはすでに1年前からしっかり弾きこんできた成果を感じます。
後半のリストの「超絶技巧練習曲集」は今シーズンからの新プログラム。
全12曲をなんとたった3週間で仕上げ、今年の8月20日、エディンバラ国際フェスティバルで初披露したというのですから、驚異的なスピードで完成させたことになります。それまで「超絶技巧練習曲」を一曲も練習したことがなかったところからのスタートと聞いて、尚更ビックリです。
今回10曲の演奏時間は1時間を越えます。
12番の最後の一音を弾ききった後、指が鍵盤の上で静止。その数十秒は、なんとも神々しく、彼のこのプログラムへの特別な思いを感じた瞬間でした。
来年はラフマニノフのピアノコンチェルト全4曲に取組む予定という話しもあるそうなので、来年日本に来ることがあればどんなプログラムを持ってくるか楽しみですね。
アンコールは自作の曲から。
彼は作曲も熱心で、今年の4月には自身の作曲によるピアノコンチェルトをクリーヴランド音楽院と共演しているのだとか。
まだ23歳という若さで、演奏家としてだけでなく、作曲家としても期待されるトリフォノフのこれからに目が離せません!
アンコールで弾いたオリジナル2曲は、やはり超絶技巧的な曲。現代のリストみたいです。
髪も相変わらずさ〜らさら。でも、細いネクタイがやけに長かったのが気になったのは、私だけでしょうか?
======= プログラム =======
イーゴリ・ストラヴィンスキー:イ調のセレナード Sérénade in A
クロード・ドビュッシー:「映像第1集」より
第1曲 水の反映 Reflets dans l'eau
第3曲 運動 Mouvement
モーリス・ラヴェル:「鏡」より Miroirs
第1曲 蛾 Noctuelles
第2曲 悲しい鳥たち Oiseaux tristes
第3曲 洋上の小舟 Une barque sur l'ocean
第4曲 道化師の朝の歌 Alborada del gracioso
== 休 憩 ==
リスト:超絶技巧練習曲集より
第1曲 ハ長調「前奏曲」 No.1, in C major, "Preludio"
第8曲 ハ短調「狩り」 No.8, in C minor, "Wilde Jagd"
第3曲 ヘ長調「風景」 No.3, in F major, "Paysage"
第4曲 ニ短調「マゼッパ」 No.4, in D minor, "Mazeppa"
第5曲 変ロ長調「鬼火」 No.5, in B-flat major, "Feux follets"
第2曲 イ短調 No.2, in A minor
第9曲 変イ長調「回想」 No.9, in A-flat major, "Ricordanza"
第10曲 ヘ短調 No.10, in F-minor
第11曲 変ニ長調「夕べの調べ」 No.11, D-flat major, "Harmonies du soir"
第12曲 変ロ短調「雪かき」 No.12, B-flat minor, "Chasse-neige"
======= アンコール曲 =======
トリフォノフ作曲:ラフマニアーナ組曲 第1番
トリフォノフ作曲:ピアノソナタ 第3楽章
J.シュトラウス/トリフォノフ編曲 :こうもり序曲
先月27日からBunkamuraのル・シネマにてロードショー中の
「アルゲリッチ 私こそ音楽!」を観に行きました。
クラシック好きなら、その名を知らない人がいない名ピアニスト、マルタ・アルゲリッチ。
彼女のドキュメンタリー映画です。
この作品は、アルゲリッチの三女ステファニー・アルゲリッチが監督しています。
この偉大な音楽家で母親であるマルタの日々の姿を、娘が3年かけてフィルムに収め作品にしました。
インタビュー形式で、ステファニーの問いかけに対してマルタが自分のことを語るシーンが随所にあります。
いったい彼女は何を感じ、考えたのか?嫌いなもの、好きなもの...
マルタという謎の人物を、言葉の断片から読み解く面白さのある映画です。
そして、3人の娘達の葛藤が、リアルでありながら悲劇的ではなく、淡々と綴られているところに、この作品のすごさを感じるのです。
実際、娘達の人生は、想像もできない葛藤と困難を乗り越えたものだったと思います。
※この後は、ストーリーの(ネタばれ)も含まれるので、それでも構わない方だけ読んでくださいね。
長女リダは、まだマルタが23歳の時産んだ子で、産後すぐに養育院に預けられました。(産んだ翌年に、ショパンコンクールで優勝しています。)その後、マルタの母(つまり祖母)が養育院から無断で孫のリダを連れ出すという(誘拐)事件を起こし、マルタは親権を失い、その後母子は会う事もままならない状況で離れて暮らす事となります。
リダは、ある年齢まで母親が有名なピアニストのマルタであることも知らなかったのだそうです。父親(ロバート・チェン)はピアノを習いたかったリダに「やめたほうがいい。母親には絶対勝てない」と言って、他の楽器をすすめたといいます。私はその言葉を言われたリダの気持ちを考えると、胸が苦しくなります。
彼女はその後、ヴィオラ奏者として生きる道を選び、現在は母親との共演もしています。
異父姉妹(アニーやステファニー)と実際に顔を合わせたのは、10代も後半になってからだったと映画では回想しています。
次女のアニー・デュトワは、シャルル・デュトワの間に産まれた娘で、その後産まれる三女ステファニーと共に、母親の元で一緒に暮らし育ちます。忙しい母の代わりにアニーが妹の面倒をみてきました。
三女ステファニーの出生届けの父親欄は不明と書かれています。
「なぜそう書いたのか?」という質問に対して、「面倒だったから...」というような返事を返す母。
でも、ステファニーはそれをそのままにしておくことができないのです。
アルゲリッチ姓を名乗る彼女は、最近父親と法律的にきちんと親子になる為の手続きをすすめています。
しかし、父親(スティーヴン・コヴァセヴィチ)がなかなか段取りよく書類を揃えることができないことに娘はもどかしさを感じ、ついに感極まってダイニングテーブルにうつぶして泣き出すシーンがあります。
そのシーンはなんともせつなく、私がこの映画に引き込まれた瞬間でした。
最後の方に、マルタが裸足で(自宅らしきところ?の)ピアノを弾いているシーンがあります。
たしか、曲はラベルのコンチェルト2楽章のあの美しいソロの部分。
自分でも理由が分らないのですが、涙が出ました。
あれは、コンサートホールで聴衆を前にして弾く演奏とはまったく異質の音楽ー心が震えます。
マルタ・アルゲリッチという人は、実に正直な人なのだと思います。
未熟な母親の部分もひっくるめ、正直に子どもと相対した結果、娘3人は母親を愛してやまないのだと思います。
一つこの映画に対して注文をつけるとすれば、それは「私こそ、音楽!」という邦題がまったくピンぼけな感じのすることです。原題は「Bloody Daughter」というタイトルで、正確にはなんと訳したらいいのかよく分らないのですが、血とか、血縁とか、そういうことがベースにある作品なんだと思うんです。
マルタの音楽を讃歌するような作品とは、ちょっと違うと思います。
もし"Bloody Daughter"の言葉の意味をご存知の方がいらっしゃったら、
ぜひメールくださいね!
昨日「世田谷芸術発信工房」さんから、出来たてほやほやのフライヤーが届きました。
v(=∩_∩=)
毎年秋(9〜11月)になると、世田谷区が中心となって区内のあちこちで芸術的な催し「世田谷区芸術百華」を開催しています。
今年はその一つ、まだ若いテノール歌手である小栗慎介さんが出演するコンサートのフライヤーやポスターのデザインをお手伝いさせていただきました。
昨年のファンタジックなイラストが魅力的なフライヤーから、
(今回初めて私が手がけさせていただくので)
小栗さんの写真をドーンと入れるデザインをご提案させていただきました。
なにしろ音楽の才能はもちろんのこと、ビジュアルも素敵な方で、
宣材写真もすごくいいものを何点もお送りいただいていたので、
デザインワークは楽しいすすみました。
実は、演奏をお聴きした事はまだない(ご本人にお目にかかったことも...)のですが、今回のお仕事を紹介してくださった「世田谷芸術発信工房」さんのお話しによれば、ただ歌が上手とか、声が美しいとかではない、心に響く歌なのだとか。今からお聴きするのが楽しみです。
Amazing Grace、オーソレミオ、サンタルチアなど、素敵な曲ばかり。
お時間がありましたら、ぜひ足をお運びください。
まちなかコンサート
〜音楽は風にのって〜
出演:テノール歌手 小栗慎介/ピアニスト ゆりまる
日時:10/26(日)13:00〜|15:00〜 2回公演 各30分
会場:成城コルティ 2階 (小田急線「成城学園前」駅すぐ)
日時:11/9(日)13:00〜|15:00〜 2回公演 各30分
会場:二子玉川ライズ ガレリア(田園都市線・大井町線「二子玉川」駅すぐ)
※入場料はいずれも無料です。
小栗慎介さんのプロフィールです。(以下フライヤーより抜粋)
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東京藝術大学声楽家卒業。2005年、万国博覧会「愛・地球博」では、イタリア館主催のフェスティバルに招かれ歌唱。2006年、俳優の故森繁久彌の遺作となった『霜夜狸』のエンディングテーマを歌唱。2007年、TBS特別番組「JAL音舞台」では、京都 金閣寺の本堂にて歌唱。2011年、世田谷区主催の東日本大震災復興支援イベント「世田谷の集い」に、俳優・中村雅俊氏、村田雄浩史と共にゲスト出演。
優しさと力強さを併せ持つ「天性の歌声」は、「感動を呼ぶテノール」として、各方面で大きな反響を呼んでいる。2011年の東日本大震災以降、たびたび被災地を訪れ、音楽による支援活動を続けている。
公式ツイッター @ogurishinsuke
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ブログを見つけました。http://ogurishinsuke.blog.shinobi.jp/