リスト「超絶技巧練習曲集」で臨むダニール・トリフォノフのリサイタル

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ダニール・トリフォノフの横浜みなとみらいホールでのリサイタルに行ってまいりました。

今回の来日公演では、2つの異なるプログラムが用意されています。
一つは前半にバッハ/リストの「幻想曲とフーガ」とベートーヴェン「ピアノソナタ 第32番 Op.111」、後半はリストの「超絶技巧練習曲集」12曲中の10曲の演奏。
もう1つは、今回私が聴いてきたプログラム、ストラヴィンスキーの「イ調のセレナード」、ドビュッシー「映像第1集」、ラヴェルの「鏡」を前半に、後半は先のプログラムと共通のリストの「超絶技巧練習曲集」全12曲のうち10曲の構成です。

それにしても少々通が好むような選曲に思える今回のプログラム。
昨年の2013年6月14日に行われたオペラシティでの演奏会では、スクリャービン「ピアノ・ソナタ第2番」、リスト「ロ短調ソナタ」を前半にもってきて、後半はショパンの24の前奏曲をチクルスで組み込むという、華やかなプログラムだったのに比べると、かなり地味な印象です。

正直、友人に誘われるまで、半ば見送ろうと思っていた今回の演奏会。
私ですらそう思うのですから、やはりなかなか一般うけしない曲目で集客には苦労しているのが伺えます。

聴き所は、やはり後半のリストの超絶技巧練習曲集。
(当初12曲演奏の予定だったようです。曲順は1,8,3,4,5,2,9,10,11,12。)
演奏順は一部入れ替えています。彼が最良と思える演奏順を追求した結果だそうで、
「この組み合わせで演奏をすることで、作品全体を通して、緊張感を保ち続けるだけでなく、それぞれの練習曲を調性において、かつ作品の個性を活かしながら結びつけ、一つの大きな物語として紡ぐことができると感じています。」とインタビューにありました。

さて、今年最大の台風で世の中が騒いでいるなか、コンサート会場に向かいました。
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今日も遠くに見えるのはFAZIOLIのピアノです。

前半のストラヴィンスキーのイ調のセレナードは、初めて聴きました。
したがって、なかなかうまく言えません...
「火の鳥」や「ペトルーシュカ」とはまったく違う作風の曲です。

ドビュッシーの映像を彼が弾くと、まさに印象派の絵画のような音の色彩に溢れた美しい世界。
ドビュッシーやラヴェルはうっとり。ピアニッシモの速いスケールでこんな音の微妙な表現が出来る人を、私は他に知りません。

前半のストラヴィンスキー、ドビュッシー、ラヴェルはすでに1年前からしっかり弾きこんできた成果を感じます。

後半のリストの「超絶技巧練習曲集」は今シーズンからの新プログラム。
全12曲をなんとたった3週間で仕上げ、今年の8月20日、エディンバラ国際フェスティバルで初披露したというのですから、驚異的なスピードで完成させたことになります。それまで「超絶技巧練習曲」を一曲も練習したことがなかったところからのスタートと聞いて、尚更ビックリです。
今回10曲の演奏時間は1時間を越えます。
12番の最後の一音を弾ききった後、指が鍵盤の上で静止。その数十秒は、なんとも神々しく、彼のこのプログラムへの特別な思いを感じた瞬間でした。

来年はラフマニノフのピアノコンチェルト全4曲に取組む予定という話しもあるそうなので、来年日本に来ることがあればどんなプログラムを持ってくるか楽しみですね。

アンコールは自作の曲から。
彼は作曲も熱心で、今年の4月には自身の作曲によるピアノコンチェルトをクリーヴランド音楽院と共演しているのだとか。

まだ23歳という若さで、演奏家としてだけでなく、作曲家としても期待されるトリフォノフのこれからに目が離せません!

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アンコールで弾いたオリジナル2曲は、やはり超絶技巧的な曲。現代のリストみたいです。
髪も相変わらずさ〜らさら。でも、細いネクタイがやけに長かったのが気になったのは、私だけでしょうか?

======= プログラム =======
イーゴリ・ストラヴィンスキー:イ調のセレナード Sérénade in A
 クロード・ドビュッシー:「映像第1集」より
 第1曲 水の反映 Reflets dans l'eau
 第3曲 運動 Mouvement

モーリス・ラヴェル:「鏡」より Miroirs
 第1曲 蛾 Noctuelles
 第2曲 悲しい鳥たち Oiseaux tristes
 第3曲 洋上の小舟 Une barque sur l'ocean
 第4曲 道化師の朝の歌 Alborada del gracioso

 == 休 憩 ==

リスト:超絶技巧練習曲集より
 第1曲 ハ長調「前奏曲」 No.1, in C major, "Preludio"
 第8曲 ハ短調「狩り」 No.8, in C minor, "Wilde Jagd"
 第3曲 ヘ長調「風景」 No.3, in F major, "Paysage"
 第4曲 ニ短調「マゼッパ」 No.4, in D minor, "Mazeppa"
 第5曲 変ロ長調「鬼火」 No.5, in B-flat major, "Feux follets"
 第2曲 イ短調 No.2, in A minor
 第9曲 変イ長調「回想」 No.9, in A-flat major, "Ricordanza"
 第10曲 ヘ短調 No.10, in F-minor
 第11曲 変ニ長調「夕べの調べ」 No.11, D-flat major, "Harmonies du soir"
 第12曲 変ロ短調「雪かき」 No.12, B-flat minor, "Chasse-neige"

======= アンコール曲 =======

トリフォノフ作曲:ラフマニアーナ組曲 第1番
トリフォノフ作曲:ピアノソナタ 第3楽章
J.シュトラウス/トリフォノフ編曲 :こうもり序曲

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このページは、Nancyが2014年10月14日 07:35に書いたブログ記事です。

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