「リー・ミンウェイとその関係展から」其の2

| コメント(0) | トラックバック(0)

お金を払って作品を手に入れても手放すアート《プロジェクト・女媧(ヌワ)》や《石の旅》。
その発想が興味深いと思いました。

さて続いて第2セクションでは、参加することが所有することになるアートが展開されています。

SECTION 2 歩く、食べる、眠るー日々の営みを再考する

DSC07892.JPG

DSC07896.JPG

DSC07897.jpg

DSC07898.jpg
《プロジェクト・ともに眠る》2000年・2014年

DSC07901.JPG
《プロジェクト・ともに食す》1997年・2014年

DSC07905.jpg
《ひろがる花園》2009年・2014年

DSC07908.JPG

DSC07909.jpg
《水仙との百日》1995年

リー・ミンウェイの作品には、「歩く」「食べる」「眠る」といった、日常の行為をあらためて考えさせるものが多くあります。

《水仙との百日》は、まさにそうしたリーの姿勢をよく示している一作で、亡くなったお祖母さんを想いながら、歩く、食べる、眠るといった行為のひとつひとつを意識して日々を過ごした記録です。

また《プロジェクト・ともに食す》《プロジェクト・ともに眠る》では、公募ののち抽選で選ばれた人たちがアーティストや美術館スタッフと閉館後の美術館で食事をしたり眠ったりします。一対一の関係性を築くこれらのプロジェクトでは、日常の行為がプライベートで特別な体験となっていきます。展示室を訪れる人々は、そこに残された滞在の痕跡や映像の記録から、彼らがどのように過ごし、どんな会話をしたかなど、想像することができます。

《ひろがる花園》では、観客は、ギャラリー内に展示されているガーベラの生花を手に取り、来た時と違う道を選んで帰る途中、見知らぬ誰かにその花を贈るというプロジェクトです。この作品は、リーが強く惹かれる「贈与(ギフト)」の思想から生まれた作品です。

============== 以下は作品紹介パネルからの文章です =================

《プロジェクト・ともに眠る》2000/2014
ベッド、ナイトスタンド
インタラクティブ・インスタレーション

アーティストや美術館のスタッフとともに、夜の美術館に泊まるというプロジェクト。この作品は、リーが夜行列車で旅をしていた時に、同室のおじいさんから強制収容所に送られた話を聞いた思い出をもとに生まれました。くじ引き用紙に名前や連絡先を書いて、箱の中に入れると、プロジェクトのホストとなるリー・ミンウェイまたは美術館のスタッフがそれを引いて、当選した方をご招待するというもので、招待を受けた人々は、いつも眠る時に使っているアイテムを、展覧会の間だけ貸し出し展示されます。夜の美術館で一体どんな話をしたのかは、記録も公開もされませんが、プロジェクトに参加した人々の個人的な持ち物がナイトスタンドの上の残されていきます。ある人の場合には本であったり、目覚まし時計だったり、アロマだったり、ぬいぐるみであったり・・・様々なプライベートなものが並べられています。

《プロジェクト・ともに食す》1997/2014
台座、畳、豆、米、ビデオ
インタラクティブ・インスタレーション
所蔵:JUT美術館準備室、台北

このステージの上では、リー・ミンウェイあるいは美術館のスタッフがホストとなり、ほとんど毎週2人だけの食事会が開催されます。この作品は、イエール大学で彫刻を学ぶため知り合いのいない土地での生活を始めたリーが、自分と一緒に食事をしながら話をしてくれる人を募集したことから始まりました。食事を介して、見知らぬ人との関係性を築こうとしたのです。ここ森美術館では、くじ引き用紙に記入して応募した方の中から抽選で選び、当選した方を普段は食べたり飲んだりすることのない展示室内での特別な食事会にご招待。その時の様子が記録映像として壁に映し出されています。(会話の音声はありません。)

《ひろがる花園》2009/2014
花崗岩、生花
インタラクティブ・インスタレーション
エイミー&レオ・シー氏蔵

どうぞお花をお持ちください、と書かれています。
ただし、つぎの2つのことを実行することが条件です。
1 ここに来た時と違う帰り道を通る。
2 その途中で出会った誰か知らない人に、お花を贈り物として渡す。
この行為は、あなたと贈り物を受け取る人の双方に変化をもたらします。
このプロジェクトによって生まれた見知らぬ人との予期せぬ出会いは、森美術館を出発点として街中に花園をひろげていこうという取り組みです。

19世紀末から20世紀にかけて活躍した文化人類学者のマルセル・モースは、競争や利益を優先する市場経済とは異なる、古代文明や世界各地の先住民の文化における贈与や交換の儀礼に着目し、後世に大きな影響を与えました。
さらに、現代アメリカの批評家ルイス・ハイドは、アーティストは天から与えられた才能(ギフト)を持ち、人々の心を動かす体験を贈与していると語っています。 贈与(ギフト)の思想にインスパイアされた本作は、リーから贈られた花のギフトを、観客それぞれが未知の誰かに再び贈与することで、美しいギフトの連鎖が街中にひろがることを意図しています。

《水仙との百日》1995
銀色素漂白方式印画

母方のお祖母さんを亡くしたリー・ミンウェイは、供養の儀式、あるいは喪失を受け入れるためのプロセスとして、彼女との思い出の花である水仙の球根を植え、100日にわたってつねに日常生活をともにしました。
写真に印刷された文字は、その行動の一部を簡潔に記録したものです。
発芽し、成長し、花を咲かせ、そして枯れてゆく水仙を身近に感じながら日々の生活を送ることで、大切な人や自分自身を含めた生のライフサイクルについて、思いをめぐらせていたのでしょう。79日目に水仙は枯れてしまいましたが、アーティストはその後も枯れてしまった水仙が入ったままの鉢植えを持ち歩き、100日間を全うしました。リーにとってお祖母さんは、深い敬慕の対象であると同時にインスピレーションの源でもありました。彼女に向けられた想いは、いくつかの作品につなぐ鍵になっています。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.r-deux.com/mooblog/mt-tb.cgi/263

コメントする

このブログ記事について

このページは、Nancyが2014年12月28日 01:23に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「「リー・ミンウェイとその関係展」から其の1」です。

次のブログ記事は「「リー・ミンウェイとその関係展から」其の3」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。