松園と華麗なる女性画家たち @山種美術館

↓チラシがあまりに素敵で、大事にとっておきたくなります。

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先月最後の日曜日、広尾に用事があり出かけた折、立ち寄ったのが山種美術館。
約束の時間まで少し間があったので、ふとこの美術館のことを思い出し足を運んでみました。
実はこの美術館を訪れるのは初めてです。
恵比寿駅から歩いて7〜8分のところにあります。日赤医療センター行きのバスに乗ると、すぐ近くに停留所があるのですが、日頃の運動不足を解消するいい機会と思い、恵比寿駅から歩くことにしました。
日曜の午後、このあたりはとても静かです。
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前日は鳥獣戯画ですっかりエネルギーを消耗してしまったので、今日はエネチャージ!
人混みから離れた美術館で静かにアート鑑賞に浸れることを期待しつつ、入場してみるとそれでもけっこうな数のお客様がいらしていました。

東京はそれこそ星の数ほど展覧会があるにもかかわらず、駅貼りポスターや新聞広告など大々的な宣伝活動をしていないこちらのような美術館でも人が集まるのはすごいと思います。

さて、山種美術館が所蔵する上村松園の作品18点が見られる今回の展覧会、素晴らしかったです。
日本画を見たいなあと思うようになったのは、わりと最近のこと。

西洋絵画がキャンバスに色を敷き詰めるのに対して、日本画は余白や間といったものが画の中にあって、(歳をとったせいか)それが心地よく自分に響いてくる気がします。

例えば、今回のチラシイメージに使われている上村松園の「蛍」という作品。
蚊帳を結んでいる日本髪の女性が、ふと足元を見ると一匹の蛍...そんな一瞬の情景を絹本に描いています。これから夏を迎える、まさに今の季節にぴったりの作品です。
蚊帳越しに透けて見える左袖がなんとも言えず色気があります。

「新蛍」という作品も簾越しの美が秀逸な作品です。

また同館が所蔵し今回も展示されている「牡丹雪」は、作品を前にしばらく魅入ってしまいました。
あえて腰下を画面から切り取り、人物を中心ではなく左下に寄せ、降りしきる雪に注意が向かうような大胆な構図は、作者の意図するところとはいえ、驚くほどの潔さを感じます。まさに見事としか言いようがありません。
このような空間の捉え方に、学ぶところが多いです。

そして、松園の作品の特筆すべきは色彩の美しさです。
描かれている女性の表情や仕草も大変美しいのですが、着物や帯、襦袢の配色や模様の美しさに目を奪われました。「砧」という作品の薄い緑青色の打掛と赤銅色の間着の重ねは、実に綺麗なのです。

岩絵の具など日本画特有のマチエールは、日本人の心に安らぎを与えてくれます。
機会があれば、ぜひご覧になってみてください。

松園の作品をはじめ、松園より少し時代を遡る野口小蘋(のぐちしょうひん)、松園とほぼ同時代の九条武子(大正3美人の一人)、河鍋暁斎の娘の河鍋暁翠(かわなべきょうすい)、近代に入って片岡球子など十数人の女流画家の作品が集められています。


女性が社会に進出するのが厳しかった時代に、一流画家として認められた上村松園は、1948年に女性で初めて文化勲章を受賞しています。

本展覧会の詳細は、山種美術館ホームページ http://www.yamatane-museum.jp/をご覧ください。

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このページは、Nancyが2015年6月 8日 17:24に書いたブログ記事です。

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