展覧会の裏方がわかる!エキサイティングな展覧会! @東京国立近代美術館

NO
MUSEUM,
NO
LIFE?
これからの美術館辞典
国立美術館コレクションによる展覧会
DSC08891.jpg
チラシを見て、なんだこりゃ!
とにかく細かい字がいっぱい書かれた薄いペラペラのフライヤーを手にした時の第一印象。蛍光オレンジと緑の色使いも、なんか安っぽいし。
(注:蛍光インクは特色なので、実は印刷物としてはチープなんかではなく、むしろお金かかっているのです。)
最近の展覧会のフライヤーは、展示の絵に負けない高級感のあるものが多く、そんな中にこういうフライヤーが混じっていると、つい何だろうこれ?と思ってしまう...そんな効果は間違いなくありました。
DSC08893.jpg
そんな怖いもの見たさの気持ちで出かけた、東京国立近代美術館。
DSC08673.jpg
東西線 竹橋駅を降りてすぐです。

主催は独立行政法人国立美術館。初めて聞いた名前。
チラシの裏の細かい字に説明が書いてあります。国立美術館の運営・管理を行うために2001年4月に発足した団体とのこと。東京国立近代美術館(竹橋)、国立西洋美術館(上野)、国立新美術館(乃木坂)、国立国際美術館(大阪)、京都国立近代美術館(京都)の5館を運営し、所蔵する計4万点にも及ぶコレクションを研究したり、貸出しを行ったりしているそうです。
へ〜という感じです。

今回の展覧会は(国立新美術館はコレクションを持たないためそれ以外の)4館の所蔵品から厳選した169点の作品が展示されているというものです。したがって、古典から近・現代のものまで、日本人作家の作品から海外のものまで、非常にバラエティに富んでいるわけで、フライヤーにも、ロダン、モネ、ウォーホールから、デュシャンの「泉」まで写真が載っています。
そして、もう一つは普段あまり気にとめられない美術館と作品の関係性そのものに敢えて焦点を当ててた展示構成になっているということ。
それはなかなか言葉で説明がしづらいので、写真でイメージしてください。

アルファベットA〜Zで始まる36の美術に関連するキーワード毎に作品がまとめられ、構成されています。
例えば、Aで始まるキーワードは"Architecture"、"Archive"、"Artist"

そのキーワードに呼応する作品がエリア内に展示されています。

DSC08697.jpg
Cで始まるキーワードは"Catalogue"、"Collection"、"Conservation"。
"Conservation"のコーナーでは、写真(下)のような解説が掲示されています。
DSC08717.jpg
DSC08719.jpg
安井曽太郎の「金蓉」展示されています。修復前の画像(左)と対比してオリジナル(右額装)を鑑賞できる仕組みになっています。

DSC08698.jpg
DSC08702.jpg
DSC08703.jpg
"Frame"にまつわる作品が集められたコーナー。
作品の中にフレームを書き込んだ作品、岸田劉生の「麗子蔵」や、絵画に囲まれたアトリエで描いたアンリ・ジュール=ギヨーム・マルタンの自画像などが飾られています。
正面奥はフランスのアーティストであるダニエル・ビュレンの「フレームの中のフレームの中フレーム No.43 緑」。
その横の重ねらたフレームは、一見誰かの作品のようにも見えるけれど、このコーナーの解説として展示されている、サンプルの額縁。

DSC08706.jpg
フランシスベーコンの「スフィンクスーミュリエル・ベンチャーの肖像」の前に取り付けられている、スチール製の手すりのようなものは一体何?と思ったので学芸員の方にお尋ねしたところ、「結界」というものだそうで、作品ではないとのこと。展示を支える道具類もキャプションがついて説明されているところも面白いです。

DSC08710.jpg
すごくユニークな作品がこれ↑。最初、だれかが壁の穴でも覗いているのかと思って素通りしそうになりました。孫原&彭禹(スンユエン&ポン・ユーの「I am here」という作品。
反対の壁には覗き穴があり、足台に乗って中を覗くと...
何が見えるかは、体験してみてのお楽しみ!

DSC08718.jpg
今回の展覧会に関連する数字のポスター。
(左から)分母の41,882は、独立行政法人国立美術館が所蔵する作品数。
分子の169はそのうち今回展示されている作品の総数。
(右)169の作品の内訳がグラフ化されたもの。46作品は東京国立近代美術館と京都国立近代美術館、43作品が国立西洋美術館、残り34作品が国立国際美術館所蔵品という内訳です。

DSC08741.jpg

DSC08773.jpg
DSC08761.jpg
DSC08796.jpg

"Storage"というテーマのコーナーは、収蔵庫を模した中に実際の絵画を展示するという大胆な試みです。
DSC08781.jpg
国際国立美術館の収蔵庫風景。左はオリジナルの藤田嗣治の「横たわる裸婦(夢)」
DSC08790.jpg
東京国立近代美術館の収蔵庫。右上は藤田清嗣の「パリ風景」という作品。

DSC08792.jpg
国立西洋美術館の収蔵庫の再現。右下は藤田清嗣の「裸婦」。
こんな風に、普段は収蔵庫に格納されているのですね。

これを見ると、美術館の裏方や、展示会場がいかに工夫されているかなど、
作品以外の部分が見えてきて、すごく面白いです。
美術をより広く深く知りたい方には、ぜひおすすめの展覧会。
そして、古今東西の名画や名作をこんなに日本が所蔵していたのか!?と驚くはずです。

一部作品を除いて、写真を撮れるのも嬉しい!
今回は、撮影にエキサイティングしてしまったので、もう一度ゆっくり作品と向き合うために、行きたいと思っています。

珍しく、(いつもブログにアップした時点でほとんど終わっている展覧会ばかりなのですが)まだ会期がたっぷりあるので、お時間のある方は足を運んでみてください。
これ以外に、「MOMATコレクション展(2-4F)」、近代工芸美術館工芸館(美術館とは別な建物です)も一緒に鑑賞できる、なんともお得な展覧会ですよ。

No Museum, No Life?―これからの美術館事典
国立美術館コレクションによる展覧会

  • 会場:東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
  • 会期:2015年6月16日 - 2015年9月13日
  • 開館時間:10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00) ※入館は閉館30分前まで
  • 休館日:月曜日(ただし7 月20 日は開館)、7月21日(火)



このブログ記事について

このページは、Nancyが2015年6月27日 11:09に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「ソーシャルデザインアワード2015 プロダクト部門 紹介」です。

次のブログ記事は「偶然立ち寄った面白い作品展 電気を通すインクのなせる技 @広尾」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。