13. THE ART OF THE COLONIES, 2013
「植民地の芸術」
7. THE PECKER AT THE SAP OF LIFE, 2015
「命の樹液を吸うキツツキ」
ベルギー人現代アーティスト、ヤン・ファーブル(Jan Fabre)による個展「Tribute to Hieronymus Bosch in Congo (2011-2013)」が、エスパス ルイ・ヴィトン東京で開催されています。
白と開放的な窓からなる広々とした空間内に、翠の玉虫色の美しくも怪しい光沢を放つ作品14点が展示。
何も知らずに作品を見ると、なんて綺麗な刺繍糸でできている作品かと錯覚してしまいましたが、よく見るとこれらの作品はすべて、昆虫のスカラベ(ブラジルタマムシ)の鞘翅(さやばね)を張り合わせて作られています。(写真下から2番目参照)
描かれている絵のモチーフは、ファーブル氏の母国であるベルギーが19世紀にコンゴに対し行った苛烈な植民地政策の歴史をテーマにしており、コンゴで行われた奴隷制度や金などの略奪行為、また賭博などが表現されています。
美しい色彩だけれど、極めてプリミティブな作品です。
ヤン・ファーブルの作品という意味では注目すべきでしょうが、技法的な新鮮さは感じられません。というのも、日本においては《玉虫厨子》が古来より伝わっており、玉虫の美しい輝きを持つ羽を使う手法は、遥か1400年以上も前に存在しました。
かのファーブル昆虫記で有名なファーブル博士の末裔でもあるヤン・ファーブル氏がこの玉虫の翅に着目して作品づくりをしているのは、興味深いです。
何万匹という玉虫の犠牲によって作られている作品のテーマが人間の暴力というのは、何かアイロニカルに思います。