2015年11月アーカイブ

この日の演奏会は、私が聴いた演奏会中で三大珍の一つに名を冠するに値するものでした。

「ユンディ・リ ショパンを弾く」と銘打たれた、オールショパンプログラム。
友人が最前列のチケットをプレゼントしてくださり、先週のコンチェルトに続くサントリーホールでのリサイタルに行ってまいりました。(P列の最前列だったので、よくお顔の見えることといったら...)

演奏曲はショパンの「バラード」4曲(第1〜4番)と「24の前奏曲」。
先週のショパンのピアノコンチェルトのことがあり、一抹の不安を覚えないでもないこの日。
着席して待っていると、場内アナウンスで、曲順が変更になったとのこと。
当初は「24の前奏曲」に続いて「バラード」だったのですが、前半バラードから始まるとの報。
それを聞いて思ったのが、何か体力的に弱っているんじゃないか?ということ。
集中力が長時間維持できないとか....

そして始まった演奏会。
音は綺麗だけど明らかに精彩を欠いている。ゆっくりから早いテンポになった後によく発生するテンポの狂い。どの曲もどことなくヒヤヒヤさせる、不安の残る演奏だったのが残念でした。
凡人ならとっくに演奏崩壊しそうなシーンでも最後まで弾ききるあたりは、逆にすごいテクニックだと思ってしまったぐらい。どう考えても、本来の実力を発揮した演奏ではありえない...
極度の緊張症とか、演奏中瞬間的にパニックに陥ってしまうとか、何か心身に原因があるとしか思えないのですが、本当はどうなのでしょうか。

前奏曲が終わって、カーテンコールに応えて弾いたのがショパンのノクターン2番。
プレリュードに比べると、安心して聞けたかな...
2曲目のアンコールは、なんとリストのタランテラ!
驚くべきは、それがこの日一番の出来と思える演奏だったこと。
こっちまでパニックになりそうです。

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さらに驚くべきことが発生しました。
客席側から花束とプレゼントを渡そうとしていたポニーテール頭の熟年女性が、いきなりステージに這い登りユンディの横に立つという、前代未聞の珍事件が発生!
パリのテロ事件で騒然とした1週間だけに、こういう思いもかけない突発事態に、皆仰天!
ホール側スタッフも大慌ての様子で降りろ降りろと手で合図を送るものの、その女性は素知らぬ顔でユンディの横にボーっと立っています。ちょっとイカれたファンの珍行動か?

結局、ユンディが挨拶を終え袖に下がる時、スマートにそのご婦人もナビし袖に下がったので、事は穏便に解決。一部始終を見ている側は、やれやれという感じ。

それから、またまた思いがけないことが起こります。
しばらくすると、ユンディが何枚かの紙を手に持ってステージに登場。
壇上で挨拶でもするのだろうか?と思って見ていると、それは譜面でした。
ピアノの前に座って「Love & Peace」と彼が言ったと思います。
それが「イマジン」でした。
明らかに譜面を見ながら初見で弾いていました。

この曲が流れていた間、会場にいたすべての人の思いは同じだったと思います。
人の命を奪うという愚かな行為を、決してしてはいけないのだという....

そして、演奏会は終演しました。

ここから先は友人との推理です。
あの婦人は思想家で、花束と一緒に譜面を彼に手わたし、演奏をして欲しいと頼んだのではないか?というストーリーです。(←あくまで推測です。)
いずれにしても、最後の曲は私たちへの不意打。
それまでのムードをがらっと変えるほどのインパクトあるものでした。
私も友人も、正直このショパンプログラムは失敗だったと思ったけれど、リストの出来を聴き↑ちょっと上昇。
最後の「イマジン」は、音楽の素晴らしさを思い出させてくれるという、なんとも胸の熱くなる不思議な感覚の演奏会になりました。

ライブは何が起こるかわからない。
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だから面白い。

外に出ると、カラヤン広場のイルミネーションが実に美しくて...
今年も残りわずかですね。

クラシックピアノの世界の奥深さ...

時々、フライヤーの内容やプログラムに惹かれて行くコンサートがあります。

この日足を運んだコンサートもその一つ。
コンサート会場でよく束で配られる演奏会のチラシの山から掘り当てた演奏会でした。
全然知らないアーティストの演奏会に飛び込んでいくのは冒険であり、どんな演奏なのかワクワクドキドキ...
それがかえって楽しいです。

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モスクワ音楽院仕込みの演奏家が弾くこの日のプログラムは、まさにロシア三昧。

前半の冒頭は、スカルラッティのソナタから始まり、ラフマニノフの絵画的練習曲Op.33-2,33-5,33-6、そして最後はラフマニノフのソナタ第2番。

休憩を挟んで後半は、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」から「ロシアの踊り」、「ペトルーシュカの部屋」、「謝肉祭」と続き、最後はムソルグスキーの「展覧会の絵」。

この演奏会の感想を書くのは案外難しくて、結局1週間なんて書こうか考えているうちに寝かせてしまいました。

言葉で表現するのは簡単ではありません。とにかく圧倒されっぱなし。ほぼ完璧な演奏。ピアノからここまで音が出るのかというほどの、重厚で響く音。それから ところどころ個性的?な演奏表現があり、聴く側にとって新鮮で楽しいものでした。こんな人がほぼ無名に近い状態で世に存在しているとしたら、ピアノ界はとてつもなく裾野が広く、恐ろしい気さえしてきます。 クラシックピアノの演奏家の世界は戦国の世かも...いつ下克上が起きても不思議はない。それが、カスプロフの演奏会の率直な感想です。

極端にメランコリックな表現はせず、過度な装飾はなく、なによりタフな精神力と音。北方の寒冷地で生き抜くたくましさのような...まさにロシアを感じさせる演奏家でした。

その毅然とした演奏には、冒頭の"圧倒された"という表現がやっぱり一番あっています。


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アンコールで弾いた曲もすごかったです。

ヴィラ=ロボスの「道化師」という曲は、生まれて初めて聞きましたが、リムスキー・コルサコフの「熊蜂の飛行」みたいな、目にも留まらぬ連打でわりと短めの曲。そしてショパンのスケルツォの1番。 アンコールで聴けるとは思ってもみなかったショパン曲で、お腹いっぱいという感じ。

ひさしぶりにご馳走様な演奏会でした。

今回はアファナシエフの肝いりで実現したという日本での初公演。リストも聞いてみたい!スクリャービンも含んだプログラムだったら、きっとまた足を運ぶに違いありません。

もしも分身の術が使えたら....


「11月11日」

クラシックピアノ界で世界的に注目をあつめる若手演奏家2人が、
ここ東京のそれぞれの会場で演奏するという運命の日になりました。

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一人はユンディ・リ。
ショパンコンクールで優勝して鮮烈なデビューを飾った彼ですが、ここ1〜2年くらいはベートーヴェンのプログラムにご執心で、ショパンの演奏を売りに開催するリサイタルは実に久しぶり。
サントリーホールで行われたこの日のプログラムは、東京交響楽団との協演でショパンのピアノコンチェルト第1番(ショパンコンクールでも弾いた彼の18番ともいうべき曲)とベートーヴェンのピアノコンチェルト第5番「皇帝」の2曲。
というわけで、私も半年以上前からこの日を楽しみにしていました。
チケット売り出し当初は、2曲ともショパンのコンチェルト(1番、2番)だったのですが、いつの間にかプログラムがベートーヴェンの5番「皇帝」に変わっていて、やはりベートーヴェンへの憧憬の念は捨てきれないのかしら?と思っていたら、いえいえ圧巻でした。

本人のたっての願いでプログラム変更されただけあって、実に素晴らしかったです。
後半だったこともあり、ピアノの音がすごく響くようになったし、オケとのバランスも良かったし、安定感のある演奏でした。

ただ大方の聴衆は、前半のショパンのピアノコンチェルトに対する期待のほうが、大きかったと思います。
ですが、蓋を開けてみると後半のベートーヴェンが圧倒的に素晴らしかったのです。
逆に、前半のショパンは「おいおい大丈夫か!?」
1楽章でユンディが間違えて、オケと合わなくなった瞬間から、私まで緊張してきて...
オケもおっかなびっくりみたいな演奏だし、終楽章の盛り上がりも正直イマイチでいただけなかった。

とは言うものの、ユンディの音は本当に綺麗。テクニックも間違いなく超絶技巧級。
こんな繊細で汚れのない美しい音を出せるピアニストは、世界中見渡してもそう居ない。
彼のショパンのコンチェルトを聴きながら、あらためて再確認しました。
でも、ここ数年演奏家として、ラビリンスを彷徨っているのではないか?と思わざる終えません。
スランプと言っていいか分かりませんが、何か壁を越えられないでいる気がします。
何より驚いたのが、ヒューマンパワーの薄さです。
これぐらい世界的な演奏家になると、ステージに登場した瞬間にオーラというか、会場の空気が一瞬で変わったりするのに、指揮者の現田さんの後ろに続いてステージに現れた男性があのユンディだと、私ははじめ気づきませんでした。
ピアノの前に座ったのを見て、え?って感じです。
ステージ上でも壊れちゃいそうな儚さを漂わせていて、なんか心配になってきてしまいました。
「美人薄命」という言葉がありますが、美しい貴公子ユンディには演奏家として太く長く生きてほしいです。
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分身の術が使えたら、絶対馳せ参じたであろう演奏会!
それが、ユジャ・ワンの "Live at the Apple Store: Yuja Wang"
なんとFacebookを見ていたら、タイムライン上にこのイベントを発見!
Apple表参道店で無料のミニライブをやるとの報。行きたい〜!
な、な、なんで今日なの〜?
よりによって、ユンディのリサイタルと同じとは、あまりに日が悪すぎる!


後日、このイベントに参加した方のブログによると、オープニングから約30分の連続演奏だったとのこと。
かなり聴き応えたっぷりだったようです。
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ガラス張りのショールームに、この日のためにグランドピアノを持ち込んでしまうという実に大胆な企画。

最近はオケや室内楽との共演が多く、ソロのリサイタルはあまり聞かないユジャ・ワンだけにこの日のアップルのミニライブは垂涎もの。パワフルで、媚がなく、聴衆を卒倒させる彼女のピアノを私はまた聴きたいです。

このライブのレビューはこちら→ http://ranran-entame.com/eventrepo/37202.html

宇奈根をご存知ですか?

宇奈根(うなね)をご存知ですか?
世田谷区の地名なのですが、場所でいうと成城学園と二子玉川の中間あたりです。
そこに、蕎麦通の間では評判の店があり、機会があれば一度訪れてみたいとかねがね思っておりました。
とは言うものの、駅からも相当距離がありとにかく足の便の悪い場所で、なおかつ住宅街の中にぽつんとあるため、場所が非常に分かりづらいと聞いておりました。
「宇奈根 山中」という名のそのお店。
天婦羅と蕎麦がコースになっています。
「銀座天一」で天婦羅を、蕎麦は本陣坊で修行されたご主人がお店をやっておられます。

成城学園前駅から「二子玉川駅行」のバスに乗り、「下宿」というバス停で下車。
今回で3度目という(自称)蕎麦王子様と一緒にうかがいました。
本当は駅でタクシーを拾って行く予定でしたが、まだ予約の時間まで少し余裕もあり、「二子玉川駅行」のバス停でバスの時刻を見てからどちらにするか考えようかしら〜なんて停留所に向かっていたら、丁度いい塩梅にバスが来たので、思わず飛び乗りました。途中、土曜の夕方だったこともあり、世田谷通りに出るまではすごい大渋滞。結局予約の時間を少し過ぎてしまいました。でも、これがタクシーだったら、きっとイライラのストレスが溜まっていたにちがいないようなノロノロ運転だったので、かえって良かった気もします。

「下宿」で下車して徒歩6〜7分くらいでしょうか。
なにやら街灯もまばらな東名高速道路の下をくぐりぬけ、あたりは完全な住宅街。
目印となるような建物もなく、蕎麦王子は「昼と夜では景色が違う...」と。
そこで頼りにしたのは、愛用のiPod touch。地図アプリで現在地と目的地の方角を確かめながら2又道を右に進んでいくと、王子が見馴れたお店を発見!めでたしめでたし。第一の関門突破です。
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と言うのも、なかなかお店が見つからず(看板が出ている訳でもなく、外観も普通の一軒家なので、よく見ないと店だとわかりません...)このあたりをぐるぐる徘徊する人も多いとのこと。
江戸川橋のリストランテ ラ・バリック トウキョウほどではないにしろ、店のわかりにくさランキングではトップ100には入れそうです。
バスでちょっと到着が遅れたものの、停留所からはほとんど迷わず辿り着けたのが、まるで奇跡のようです。
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楽しみにしていた甲斐のあるお店でした。
カウンター越しにご主人が一人で天婦羅を揚げ、蕎麦も茹でます。
私たちが到着した頃は先客が2組ぐらいでしたが、次々にお客様の来店がありご主人も忙しそう。
コースの冒頭はまず天婦羅が数品。
揚げたての天婦羅は、素材の味が引き出されてとても美味しいものばかり。
海老、グリーンアスパラ、鱚(きす)、ヤングコーン、それに追加で「穴子」と「牡蠣」もいただきました。
ヤングコーン、サツマイモなどのお野菜や追加でお願いした牡蠣が美味しかったです。
そして天婦羅の最後を締めくくるのが、びっくりぽんのかき揚げです。
野球ボールぐらいあるまん丸のかき揚げには、海老、グリーンアスパラ、蓮根などが入っていて、いろいろな食感の楽しめる一品。
結構この時点でお腹がいっぱいになってしまいました。
そして締めのせいろ蕎麦。粗挽きもあると聞いたので、2色にしていただきました。
つゆがまた濃すぎず、上品な味わい。
デザートは、蕎麦がきに黒蜜をかけたものがこちらの定番とのこと。
これがあっさりした甘みで、蕎麦の余韻を楽しめるものでした。
実はちょっとしたアイディアもいただきました。
最近、父が誤嚥性肺炎をおこし入院。以来嚥下機能が著しく落ちてしまい、とろみ食やムース状の食事になってしまいました。
おかずはわりと口にするのだけれど、ご飯は(味が気に入らないためか?)全然食が進まず、みなが心配している今日この頃。海苔の佃煮だの、ゆかりだの、あの手この手で食べさせようと四苦八苦しているのですが...
実は大の甘党なので、ご飯に黒蜜をかけたらどうか?なんかすごくいいアイディアな気がしてきました。
さっそく週末試してみようと思います。

大満足の食事を終え、ご主人の勧めに従い帰りは二子玉川駅まで歩いて帰ることにしました。
野川か多摩川に出れば、あとはほぼ一本道なので、ただひたすら歩けば着くとのこと。
軽く考えて店を後にしたものの、肝心の川までなかなかたどり着けず...
人もすれ違わない住宅街の道、とうとう地図アプリで現在地を調べ進むことに。
途中方角が分からなくなりながらも、なんとか多摩川沿いの道に行き当たり、2人胸をなでおろしました。
空気が冷たくなくて、ほどよい夜風のなか、川沿いの遊歩道を歩きました。
30分はゆうに歩いたでしょうか。
「隣人よ!あれが二子玉の灯だ」
遥か彼方に高島屋のサインが見えた時は、まさにこんな心境でした。
宇奈根という場所は、23区にあって秘境の要素を持ったなかなか味のある場所です。
機会がありましたら、ぜひ蕎麦を食べに行ってみてください。

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宇奈根 山中
世田谷区宇奈根3-7-15
電話 03-3416-6620

小田急線・成城学園前駅、もしくは東急田園都市線/大井町線・二子玉川駅よりバス。
下宿下車徒歩6,7分。
成城学園よりです。成城学園から徒歩25分位。二子玉川駅から2,542m
お店のブログ http://ameblo.jp/unane-yamanaka-soba/

蔦屋家電で大竹伸朗ガチャ景しました

今日はなんかついているぞ!

そんな日がたま〜にあるものですが、昨日の日曜日はそんな1日でした。

成城から宇奈根、そして最後は二子玉川を歩いた末、蔦屋家電で大竹伸朗のガチャを発見しました!
現代アートで有名なあの大竹先生の作品がなんとフィギュアに...というわけで、 やりたい衝動にかられ500円を投入。何が出てくるかワクワク。
6種類ある中で一番欲しいのはもちろん《ジャリおじさん》。

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なんと、一番欲しかった《ジャリおじさん》をGETしました。

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