11月11日:もし分身の術が使えたなら...行きたかったもう一つの演奏会

もしも分身の術が使えたら....


「11月11日」

クラシックピアノ界で世界的に注目をあつめる若手演奏家2人が、
ここ東京のそれぞれの会場で演奏するという運命の日になりました。

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一人はユンディ・リ。
ショパンコンクールで優勝して鮮烈なデビューを飾った彼ですが、ここ1〜2年くらいはベートーヴェンのプログラムにご執心で、ショパンの演奏を売りに開催するリサイタルは実に久しぶり。
サントリーホールで行われたこの日のプログラムは、東京交響楽団との協演でショパンのピアノコンチェルト第1番(ショパンコンクールでも弾いた彼の18番ともいうべき曲)とベートーヴェンのピアノコンチェルト第5番「皇帝」の2曲。
というわけで、私も半年以上前からこの日を楽しみにしていました。
チケット売り出し当初は、2曲ともショパンのコンチェルト(1番、2番)だったのですが、いつの間にかプログラムがベートーヴェンの5番「皇帝」に変わっていて、やはりベートーヴェンへの憧憬の念は捨てきれないのかしら?と思っていたら、いえいえ圧巻でした。

本人のたっての願いでプログラム変更されただけあって、実に素晴らしかったです。
後半だったこともあり、ピアノの音がすごく響くようになったし、オケとのバランスも良かったし、安定感のある演奏でした。

ただ大方の聴衆は、前半のショパンのピアノコンチェルトに対する期待のほうが、大きかったと思います。
ですが、蓋を開けてみると後半のベートーヴェンが圧倒的に素晴らしかったのです。
逆に、前半のショパンは「おいおい大丈夫か!?」
1楽章でユンディが間違えて、オケと合わなくなった瞬間から、私まで緊張してきて...
オケもおっかなびっくりみたいな演奏だし、終楽章の盛り上がりも正直イマイチでいただけなかった。

とは言うものの、ユンディの音は本当に綺麗。テクニックも間違いなく超絶技巧級。
こんな繊細で汚れのない美しい音を出せるピアニストは、世界中見渡してもそう居ない。
彼のショパンのコンチェルトを聴きながら、あらためて再確認しました。
でも、ここ数年演奏家として、ラビリンスを彷徨っているのではないか?と思わざる終えません。
スランプと言っていいか分かりませんが、何か壁を越えられないでいる気がします。
何より驚いたのが、ヒューマンパワーの薄さです。
これぐらい世界的な演奏家になると、ステージに登場した瞬間にオーラというか、会場の空気が一瞬で変わったりするのに、指揮者の現田さんの後ろに続いてステージに現れた男性があのユンディだと、私ははじめ気づきませんでした。
ピアノの前に座ったのを見て、え?って感じです。
ステージ上でも壊れちゃいそうな儚さを漂わせていて、なんか心配になってきてしまいました。
「美人薄命」という言葉がありますが、美しい貴公子ユンディには演奏家として太く長く生きてほしいです。
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分身の術が使えたら、絶対馳せ参じたであろう演奏会!
それが、ユジャ・ワンの "Live at the Apple Store: Yuja Wang"
なんとFacebookを見ていたら、タイムライン上にこのイベントを発見!
Apple表参道店で無料のミニライブをやるとの報。行きたい〜!
な、な、なんで今日なの〜?
よりによって、ユンディのリサイタルと同じとは、あまりに日が悪すぎる!


後日、このイベントに参加した方のブログによると、オープニングから約30分の連続演奏だったとのこと。
かなり聴き応えたっぷりだったようです。
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ガラス張りのショールームに、この日のためにグランドピアノを持ち込んでしまうという実に大胆な企画。

最近はオケや室内楽との共演が多く、ソロのリサイタルはあまり聞かないユジャ・ワンだけにこの日のアップルのミニライブは垂涎もの。パワフルで、媚がなく、聴衆を卒倒させる彼女のピアノを私はまた聴きたいです。

このライブのレビューはこちら→ http://ranran-entame.com/eventrepo/37202.html

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このブログ記事について

このページは、Nancyが2015年11月13日 12:13に書いたブログ記事です。

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