不思議ちゃんユンディ・リ。何が起こるかわからないライブの面白さ

この日の演奏会は、私が聴いた演奏会中で三大珍の一つに名を冠するに値するものでした。

「ユンディ・リ ショパンを弾く」と銘打たれた、オールショパンプログラム。
友人が最前列のチケットをプレゼントしてくださり、先週のコンチェルトに続くサントリーホールでのリサイタルに行ってまいりました。(P列の最前列だったので、よくお顔の見えることといったら...)

演奏曲はショパンの「バラード」4曲(第1〜4番)と「24の前奏曲」。
先週のショパンのピアノコンチェルトのことがあり、一抹の不安を覚えないでもないこの日。
着席して待っていると、場内アナウンスで、曲順が変更になったとのこと。
当初は「24の前奏曲」に続いて「バラード」だったのですが、前半バラードから始まるとの報。
それを聞いて思ったのが、何か体力的に弱っているんじゃないか?ということ。
集中力が長時間維持できないとか....

そして始まった演奏会。
音は綺麗だけど明らかに精彩を欠いている。ゆっくりから早いテンポになった後によく発生するテンポの狂い。どの曲もどことなくヒヤヒヤさせる、不安の残る演奏だったのが残念でした。
凡人ならとっくに演奏崩壊しそうなシーンでも最後まで弾ききるあたりは、逆にすごいテクニックだと思ってしまったぐらい。どう考えても、本来の実力を発揮した演奏ではありえない...
極度の緊張症とか、演奏中瞬間的にパニックに陥ってしまうとか、何か心身に原因があるとしか思えないのですが、本当はどうなのでしょうか。

前奏曲が終わって、カーテンコールに応えて弾いたのがショパンのノクターン2番。
プレリュードに比べると、安心して聞けたかな...
2曲目のアンコールは、なんとリストのタランテラ!
驚くべきは、それがこの日一番の出来と思える演奏だったこと。
こっちまでパニックになりそうです。

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さらに驚くべきことが発生しました。
客席側から花束とプレゼントを渡そうとしていたポニーテール頭の熟年女性が、いきなりステージに這い登りユンディの横に立つという、前代未聞の珍事件が発生!
パリのテロ事件で騒然とした1週間だけに、こういう思いもかけない突発事態に、皆仰天!
ホール側スタッフも大慌ての様子で降りろ降りろと手で合図を送るものの、その女性は素知らぬ顔でユンディの横にボーっと立っています。ちょっとイカれたファンの珍行動か?

結局、ユンディが挨拶を終え袖に下がる時、スマートにそのご婦人もナビし袖に下がったので、事は穏便に解決。一部始終を見ている側は、やれやれという感じ。

それから、またまた思いがけないことが起こります。
しばらくすると、ユンディが何枚かの紙を手に持ってステージに登場。
壇上で挨拶でもするのだろうか?と思って見ていると、それは譜面でした。
ピアノの前に座って「Love & Peace」と彼が言ったと思います。
それが「イマジン」でした。
明らかに譜面を見ながら初見で弾いていました。

この曲が流れていた間、会場にいたすべての人の思いは同じだったと思います。
人の命を奪うという愚かな行為を、決してしてはいけないのだという....

そして、演奏会は終演しました。

ここから先は友人との推理です。
あの婦人は思想家で、花束と一緒に譜面を彼に手わたし、演奏をして欲しいと頼んだのではないか?というストーリーです。(←あくまで推測です。)
いずれにしても、最後の曲は私たちへの不意打。
それまでのムードをがらっと変えるほどのインパクトあるものでした。
私も友人も、正直このショパンプログラムは失敗だったと思ったけれど、リストの出来を聴き↑ちょっと上昇。
最後の「イマジン」は、音楽の素晴らしさを思い出させてくれるという、なんとも胸の熱くなる不思議な感覚の演奏会になりました。

ライブは何が起こるかわからない。
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だから面白い。

外に出ると、カラヤン広場のイルミネーションが実に美しくて...
今年も残りわずかですね。

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このブログ記事について

このページは、Nancyが2015年11月22日 01:02に書いたブログ記事です。

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