時々、フライヤーの内容やプログラムに惹かれて行くコンサートがあります。
この日足を運んだコンサートもその一つ。
コンサート会場でよく束で配られる演奏会のチラシの山から掘り当てた演奏会でした。
全然知らないアーティストの演奏会に飛び込んでいくのは冒険であり、どんな演奏なのかワクワクドキドキ...
それがかえって楽しいです。
モスクワ音楽院仕込みの演奏家が弾くこの日のプログラムは、まさにロシア三昧。
前半の冒頭は、スカルラッティのソナタから始まり、ラフマニノフの絵画的練習曲Op.33-2,33-5,33-6、そして最後はラフマニノフのソナタ第2番。
休憩を挟んで後半は、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」から「ロシアの踊り」、「ペトルーシュカの部屋」、「謝肉祭」と続き、最後はムソルグスキーの「展覧会の絵」。
この演奏会の感想を書くのは案外難しくて、結局1週間なんて書こうか考えているうちに寝かせてしまいました。
言葉で表現するのは簡単ではありません。とにかく圧倒されっぱなし。ほぼ完璧な演奏。ピアノからここまで音が出るのかというほどの、重厚で響く音。それから ところどころ個性的?な演奏表現があり、聴く側にとって新鮮で楽しいものでした。こんな人がほぼ無名に近い状態で世に存在しているとしたら、ピアノ界はとてつもなく裾野が広く、恐ろしい気さえしてきます。 クラシックピアノの演奏家の世界は戦国の世かも...いつ下克上が起きても不思議はない。それが、カスプロフの演奏会の率直な感想です。
極端にメランコリックな表現はせず、過度な装飾はなく、なによりタフな精神力と音。北方の寒冷地で生き抜くたくましさのような...まさにロシアを感じさせる演奏家でした。
その毅然とした演奏には、冒頭の"圧倒された"という表現がやっぱり一番あっています。
アンコールで弾いた曲もすごかったです。
ヴィラ=ロボスの「道化師」という曲は、生まれて初めて聞きましたが、リムスキー・コルサコフの「熊蜂の飛行」みたいな、目にも留まらぬ連打でわりと短めの曲。そしてショパンのスケルツォの1番。 アンコールで聴けるとは思ってもみなかったショパン曲で、お腹いっぱいという感じ。
ひさしぶりにご馳走様な演奏会でした。
今回はアファナシエフの肝いりで実現したという日本での初公演。リストも聞いてみたい!スクリャービンも含んだプログラムだったら、きっとまた足を運ぶに違いありません。