2016年2月アーカイブ

江戸時代後期、江戸庶民の食だったと言われる「ねぎま鍋」。
葱と脂身の多い鮪のトロを醤油ベースの割り下で煮るお料理です。
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30代までは鍋料理を外食することはほとんどなかったのですが、この数年、「駒形どぜう」、日比谷の「一会」のあんこう鍋、京都「大市」のすっぽん鍋、浅草「三角」の河豚鍋、「中江」の桜なべ、神田須田町「ぼたん」の鳥すきやき、浅草「米久本店」のすき焼きなど、老舗から大衆的なお店まで、いろいろな鍋を体験する機会を諸先輩方からいただいて...
すっかり鍋の魅力に取り憑かれてしまった私!
今度は「ねぎま鍋」でしょ!

というわけで、神楽坂にちょっと知られたお店があるとのことで、数年前から行ってみたいものと思っておりました。 そのお店「山さき」のねぎま鍋は、その人気と季節限定なこともあって、なかなか予約が困難。以前一度トライしたものの、時すでに遅し...で、そのシーズンは見送るはめに。そんな私のもとに1月のはじめ、食い道楽な友人から2月10日に予約が取れたよ!というご連絡。
な、な、なんと嬉しいお誘い!
願いが叶いました。

この「山さき」というお店は、大塚にある「なべ家」と謂う、これまた有名な江戸前料理のお店で修行された女将さんがひらいたお店で、2007年「ミシュランガイド東京」の☆(1つ星)にも選ばれています。

毘沙門天の向かいの路地をはいったところの、雑居ビルの2階にあるこちらのお店。
初めての人は、ビルの入口にまず驚くと思います。ドアに紙がぺらっと1枚貼ってあるだけという、シンプルさ。
階段を2階にあがると綺麗で瀟洒なお店の入口に辿り着くのですが...途中は本当に雑居ビルです。
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お店の仕組みはいたってシンプル。電話予約の際に鍋のコースをあらかじめお願いしておくというもの。
なので来店したら、卓上にあるお酒のメニューから飲み物を注文し、後は待つのみ。
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秋田の「春霞」山廃本醸造を熱燗で。

初めに供されたお料理は、菜の花と白魚とぬたの酢味噌和えの小鉢もついた、写真のような盛り合わせ。
江戸前らしい甘く濃いめのだし巻きたまご。梅と鰹で和えた海苔、たらの芽の天ぷら、鯛の身のそぼろ、煮豆。
鯛のそぼろは、山椒がすごく効いていて、想像していなかった美味しさ。ちょっとしびれるような感覚が残る鯛そぼろと、ほんのり苦味のあるたらの芽、甘いだし巻き、梅の酸味がこれまた美味しい海苔、やさしい味の煮豆...
味のバリエーションに富んだ、工夫を感じる素敵な一品でした。


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つづいて、「ひらめの糸作り」。お醤油ではなく「煎り酒」をつけていただきます。
このあたりもすごく料理人としてのこだわりを感じさせます。

そして、いよいよ待望のお鍋に突入。
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大きなトロがまず目に飛び込んできて、期待は高まります。
同じ大皿には葱、わかめ、クレソン、せり、うどがのっています。
鍋はお店の方がすべて仕切ってくださるので、私たちお客はお酒をちびちびしながら楽しく写真など撮影。
まず醤油出汁の入った土鍋に、葱とまぐろを投入。
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しばらく経ってから、わかめが投入されました。
そし頃合いをみてお店の方がお皿に盛り付けて、それぞれの前に提供してくださいます。
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お皿に盛られた鮪の縞目の美しいことといったら...
まっさきに箸は鮪に向かいます。
一口入れて、あ〜幸せ。脂ののった鮪はやわらかく、極上の味。
熱々の葱もトロッとしていて、これまた美味しく、わかめもいい。
味のアクセントは粗挽き胡椒ひとつ。このシンプルさが鮪のうまみや素材とぴったり。

一旦すべての具材が鍋から姿を消すと、また鮪と葱が投入され、今度はせりの順です。
そうして、また2杯目が終わり、次は鮪と葱と独活の組み合わせ。
最後がクレソンといった具合。
ごった煮ではなく、それぞれ鮪と葱を基本に+1品追加で仕立てるすごく丁寧で上品な鍋なのです。

最後にご飯をよそってくださり、上からお鍋のスープをおかけて、お茶漬け風に。
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デザートは、あまおうときんつば。
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お店を開いた料理人の山崎美香さんをはじめ、スタッフは全員女性。
お揃いのエプロンに草履姿で、店内は和やかな優しい雰囲気に包まれています。
料理もそうですが、女性ならではのとても細やかな気配りで、とても気持ちのよいお店です。

材料やサービスを考えたら、お値段もとてもリーズナブル。
日本酒も結局2人で4合も飲んでしまいました。あ〜いい気分。

江戸の味にこだわってお店をオープンしたというお店は、これだけ飲食店がひしめきあう東京にあっても
おそらく僅か。そんな綺羅星のようなお店に伺うことができ、本当にいい思い出になりました。

夏の「相並(アイナメ)の梅干し鍋」も美味しそうです。

ぜひ江戸料理に興味がある方は足を運んでみてください。

山さき
ヒトサラの紹介ページ http://hitosara.com/0006023530/

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CDで聴くのとはこれほど違うものか...という際たるピアニストの一人。

彼女の演奏を初めて聴いたのは、Youtubeで公開されていたシューマンのピアノコンチェルト(ヤルヴィ指揮hr交響楽団と共演)。
この出会いはセンセーショナルに私の中に残りました。背中がぱっくり開いてお尻の割れ目まで見えそうな白いドレスにものけぞったけれど、その豊満な曲線美が放つエネルギーと色気と奔放な演奏は衝撃的でした。
他の動画も聴いての感想は、音楽性は確かに素晴らしいけどちょっと乱暴で、暴れん坊女王という感じ。んーちょっと嫌いな演奏家の部類かも。
でも、人間って不思議な生き物で...
怖いもの見たさの好奇心というのが時々首をもたげ、一度は生で聴いてみようと思いチケットを買ってみました。いつもご一緒してくださる親友も誘ってみたものの、演奏プログラムを見て「興味なし」と一刀両断。
今回は一人で(淋しく?)音楽を満喫です。
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全員に配られるパンフレット。最近は有料化していることが多く、こういうお土産があるのは純粋に嬉しいです。表紙の写真がすごくいいです。ページをめくると、素人がDTPで作ったのか?と思ってしまうようなテキストレイアウトだけれど、とにかく使われている写真がGOOD。パンフレットに限らず、SONY MUSICから出ている彼女のCDはどれもジャケットデザインが秀逸です。デザイナーの眼からみても、いい仕事しているなあと思います。思わずジャケ買いしたくなるようなセンスの良さなので、とても周りに恵まれていると思います。

さて、ホール会場に入ると、あまりに男性が多く...(まあわかる気はしますが...)
7〜8割は男性でしょうか。そのうちの2/3以上は40代後半〜60代のロマンスグレーのシニア層。
お一人様で聴きに来られた方が圧倒的に多いように見受けられました。
(私の座ったブロックの6人掛けのなかで、なんと女性は私一人。前の列も女性はお一人で、いかに男性から支持されているかがわかります。)
クラシックの演奏会にしては、ご夫婦とか、男女のカップルがあまりいないのも面白いです。

さて今日のステージ衣装は、真っ赤なマーメイドラインのロングドレス。膝下のフレアーがたっぷりで、とても素敵!背中は目のやり場に困らない程度のほどよい開きでした(笑)。
それでも女性らしいボディラインが存分に楽しめる衣装で、グランドピアノの黒と赤とのコントラストがステージをドラマティックに演出しています。実にスター性のある方です。

まず前半は、ムソルグスキーの「展覧会の絵」。
最近、リサイタルでよくとりあげられるこの曲。昨年行ったセルゲイ・カスプロフの演奏会でも聴きましたが、今年の7月に予定されているガヴリリュク(7/14オペラシティ)やロマノフスキー(7/5紀尾井)のリサイタルでもこの曲がプログラムされていて、何か流行?でしょうか。
大抵は後半で演奏されるのですが、今日はしょっぱなからこの組曲から始まります。

詩情豊かな演奏。そして、最後の「キエフの大門」でフィナーレに向かって最高潮に。
とにかく魅力的な女性ピアニストであることは、この曲で確信しました。

休憩を挟んで後半は、リストの小品プログラムが続きます。
リストの「3つの演奏会用練習曲」の中の「軽やかさ La Leggierezza」S.144
  軽快に弾くスケールがなんとも美しい!
「超絶技巧練習曲 Transcendental」の第5番「鬼火 Feux follets」S.139
「パガニーニによる大練習曲」の第3番「ラ・カンパネラ La campanella」S. 141
「半音階的大ギャロップ」S.219
ホロヴィッツ編:ハンガリー狂詩曲第2番
そして、最終曲はストラヴィンスキーの「ペトルーシュカからの3楽章」

Youtubeで聴いたような、パッション炸裂!暴走!場合によっては崩壊?そんな危険な演奏はないけれど、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカからの3楽章」はかなりサディスティック。
でも聴衆は、さらなる1曲を欲していたのです。
それはアンコール2曲目でついに実現!
椅子に座るなり拍手が止むのも待たずに弾きだした、プロコフィエフの「戦争ソナタ」で知られる有名な第7番の3楽章。この聴衆の心を掌握するお手並みには舌を巻きました。これぞ彼女なのだ!
息をつかせぬ弾きっぷりに、本日最大の暴走モードを体感。拍手喝さいでスタンディングオーベーションが起こり、実に楽しい演奏会。
そういうキワモノ的なところが彼女の人気の秘密に違いないのですが、私は逆にアンコール1曲目のドビュッシーの「月の光」には心ゆさぶられました。3曲目のヘンデルもなんとも情緒豊かで素敵な演奏なのでしょう。
メロディーの美しいゆったりした曲は、すごく女性らしい繊細な演奏をするんですよね。
プロコのような激しさとドビュッシーの実にナイーヴな演奏。
いろいろな顔をもつ多面的なピアニストには惹きつけられます。
ランランの時にも感じたけれど、完全にステージをピアニストがコントロールし自分の世界を作っているという点において、やはり超一流の演奏家なんだなあと思いました。
お辞儀一つとっても、顔を下に向けたりせず、ずっと客席を見据えて微笑みます。
鳴り止まない拍手に笑顔で答える時も、両手を後ろに組んで腰をちょっとくねらせる...
そんな何気ない仕草ですら、くすぐられない男ゴコロは、世の中にきっとないです。
演奏以外のすべてにおいてある種の魔力を持っていて、この会場の男性陣は大満足だったことでしょう。
かくいう私も、きっと次回また足を運んでしまうと思います。
彼女の今後のプログラムに目が離せません。
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彼女を知るきっかけになった動画。シューマンのピアノコンチェルト
いまでも初めて聴いた衝撃は忘れられないものに...


Kathia Buniatishvili - Prokofiev: Piano Sonata no.7 Op.83
賛否両論ありそうなプロコのピアノソナタ第7番。
3楽章(14:31-)の暴走炸裂は、生で聴くとそれは「ブラヴォー」になってしまうのです!
そんな興奮作用のあるドラッグのような演奏。


Kathia Buniatishvili - Claude Debussy: Clair de lune
彼女の演奏するドビュッシーの「月の光」は、とても好きです。


ヘンデルなんてバロック時代の古典でしょ!と思ってちっとも興味なかったのですが、これを聴いて目から鱗。認識をあらためました。やりきれない切なさすら感じるメロディはとてもロマンティックで、私も弾いてみたくなりました。

【本日の演奏曲】
ムソルグスキー:展覧会の絵
==== 休 憩 ====
リスト:三つの演奏会用練習曲より「軽やかさ」     
    超絶技巧練習曲第5番 変ロ長調「鬼火」
    パガニーニによる大練習曲 第3番 嬰ト短調「ラ・カンパネッラ」
    半音階的大ギャロップ
リスト/ホロヴィッツ編 :ハンガリー狂詩曲第2番
ストラヴィンスキー:ペトルーシュカよりの3楽章

《アンコール曲》
ドビュッシー:月の光  Suite Bergamasque - Clair  de Lune
プロコフィエフ:ピアノソナタ第7番 3楽章  Piano Sonata Op.83
ヘンデル:メヌエット Suite in G Minor HWV439 - Menuet

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