シャルル・リシャール=アムランの演奏に恋して

5月23日なんとも暑い日でした。

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今年1月の芸術劇場でのショパンコンクール・ガラ・コンサートのピアノソナタを聴いて、その演奏にすっかり惚れ込んでしまったピアニスト、シャルル・リシャール=アムラン。
彼の日本でのデビューリサイタルに友人を誘って行きました。

東京オペラシティの2階の最前列の一番端という席。
ステージの右真上という場所からは、演奏する手の動きはほとんど見えませんが、演奏中の顔の変化がつぶさに見え、時々みせるとてもチャーミングな表情を楽しめました。 一度目が合ってしまった(ように思えた)瞬間もあったりして...音もクリアに聴こえる、なかなか良い席でした。

とにかくどの曲も実に良かった!
想像を上回る充実した演奏。人生で忘れられないリサイタルの一つになること必須。
ときめきの余韻が今日も私を包んでいます。

ものすごく丁寧に音を紡ぐピアニストです。
右手と左手の妙技としか言いようがない音の掛け合いやバランスに、もうクラクラです。
若い演奏家なら煌びやかは表現をしそうな箇所を、彼の場合ちょっと控えめ。あくまで曲全体を俯瞰した上で、詩情豊かに歌い上げながらコントロールをしていることが伺えます。
なので、ワインで言ったらボジョレーヌーヴォーではなく、フルボディのボルドーといった感じ。まろやかで味わいぶかく、とがったところのない感じです。
それが、病弱で繊細だったショパンの面影と重なります。


ピアノはYAMAHAの最上位機種CFX。
アムランはショパンコンクールでも一貫してこのピアノを選んで演奏していましたが、この日も同じピアノでした。実は、リサイタルではスタンウェイの一人勝ちですが、ショパンコンクールではYAMAHAを選ぶピアニストの方が圧倒的に多かったのです。
リヒテルがYAMAHAを愛したのは有名な話しですが、現在世界の第一線で活躍しているピアニストがリサイタルでYAMAHAを採用しているというのは、残念ながら耳にしません。
アムランが将来にわたってYAMAHAを採用してくれたら、これほど嬉しいことはないのですが...。

まだ26歳だというのですから、これからが楽しみです。

サイン会があるらしいぞ!という情報を聞き付け、休憩時間中にCD売り場に行ってみると
人だかりで近寄ることすらできない状態。
そのうち、人垣が決壊したので覗き込んでみると、完売御礼!
演奏の反応はダイレクトです。

せっかくなので、記念にパンフレットを一部購入して帰ることにしました。
パンフレットごときじゃサインはしていただけないとのこと....残念なり。
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表紙はかっこいいタキシードですが、今日はごく普通の黒のシャツと背広姿でした。それにしても、ちょっと痩せないと健康が心配です。

ピアノソナタ第3番。1月のあの感動をもう一度。
感極まって?1楽章で拍手するお客さんがちらほら。それにもニッコリ笑顔で頭だけお辞儀。
なんか温かい人柄感じます。

アンコールは「英雄ポロネーズ」。
圧巻の演奏に拍手喝采。
2曲目、座って何か「ショパンの曲ではなくて、なんとかです。」みたいなことを英語で客席に向かって言ったのですが、あまりよく聞き取れませんでした。
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初めて聴く美しいメロディで現代曲っぽさも感じる曲。

まったく聞いたこともがないエネスコという作曲家の作品だそうです。
あまりの意外性にびっくり。まさか、ショパン以外の曲がアンコールの2曲目に現れるとは...4〜5曲もアンコールを弾いたなら、それも想定内ですが。
そして、大半の人が聞いたこともない作曲家の作品をぶつけてくるとは...
(一緒に行った友人は、名前は聞いたことがあると言っていました。それだけでも彼は真にクラシック通として尊敬に値します!)
エネスコはWikiによるとルーマニアの作曲家とのこと。同じルーマニア出身のピアノ講師に5歳から18歳まで師事していたそうなので、その影響でしょうか?
きっと彼のお気に入りの曲の一つなのだと思います。

シャルル・リシャール=アムラン
彼はどんな引き出しをもっているのでしょう。
カナダ出身のピアニストは、グレン・グールドやマルカンドレ・アムラン(同じラストネームですが親戚とかではないそうです)など、ちょっと個性的な演奏家が多いように思います。
彼がどんなピアニストになっていくのか、ウォッチャーとして楽しみであり、気になるところです。
各種コンクールなどで覇者となり、日々世界を飛び回る演奏生活の若きピアニスト達。
最近ちょっとそんな演奏家に対して、私自身は懐疑的というか心配しています。
十分自分自身を磨く時間も余裕もないまま、ひたすら演奏活動に追われてしまっているのではないか?
私には、その最たる犠牲者はユンディ・リに思えてなりません。
彼にはいっそしばらく演奏活動を休止して、自分自身としっかり向き合ってほしいと思ってしまいます。そして、しかるべき音楽的指導も受けるべきです。

話は逸れてしまいましたが、
アムランは、アンコールの演奏からも「我が道を往く」という姿勢が感じられ、実に面白いキャラです。
他の多くの人ように、そう頻繁に日本でのリサイタルはない気がするのは私だけかしら
個人的にはベートーヴェンの3大ソナタ、後期ソナタとか聴きたいところです。


エネスコ以外にどんなレパートリーを持っているのでしょうか?
モントリオール国際音楽コンクールではこんな曲を弾いています。
以下公式サイトhttp://music.cbc.ca/#!/play/artist/Charles-Richard-Hamelinより


QUARTER-FINALS

MARJAN MOZETICH "Tremblements: Hommage à Ligeti" / "Tremors: Homage to Ligeti"
JOSEPH HAYDN Sonate no 47 en si mineur/ in B Minor, Hob.XVI:32: I. Allegro moderato II. Menuet III. Finale: Presto
SERGUEÏ LYAPUNOV Douze Études d'exécution transcendante, opus 11: no 2 "Ronde des fantômes"
CLAUDE DEBUSSY Étude ''Pour les Octaves'', Livre I no 5
JOHANNES BRAHMS Intermezzo en si mineur / in B minor, opus 119 no 1
FRANZ LISZT Ballade no 2 en si mineur / in B minor S. 171 / R16

SEMI-FINALS
CLAUDE DEBUSSY Pour le Piano : I. Prélude II. Sarabande III. Toccata
ALEXANDRE SCRIABINE Sonate no 10 opus 70
FRÉDÉRIC CHOPIN Sonate no 3 en si mineur / in B minor opus 58: I. Allegro Maestoso II. Scherzo
III. Largo IV. Finale

FINALS

SERGUEÏ RACHMANINOV Concerto no 2 opus 18 en do mineur / in C minor: I. Moderato II. Adagio sostenuto
III. Allegro scherzando

スクリャービンのピアノソナタ10番やリャプノフといった
ロシアの作曲家の作品も弾いているのですね。




本日のプログラム All Chopin Program
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夜想曲 第 Nocturn in B major Op.62-1
バラード 第3番 Ballade No.3 in A flat major Op.47
幻想ポロネーズ Polonaise-Fantaisie in A flat major Op.61
序奏とロンド Introduction and Ronde in E flat major Op.16
========= 休憩 ============
4つのマズルカ 4 Mazurkas Op.33
ソナタ 第3番 Sonata No.3 in B minor Op.58

《アンコール》
1曲目
英雄ポロネーズ Polonaise No.6 "Heroique" in A-flat major Op.53
2曲目
エネスコ:パバーヌ(組曲第2番 Op.10より)


叙情的な美しい曲です。音源が悪いですが、作曲家本人の演奏をお楽しみください。

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このブログ記事について

このページは、Nancyが2016年5月24日 16:58に書いたブログ記事です。

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