五感をふるに刺激される食のアート体験 Florilége @神宮前

世の中カタカナ表記が氾濫しています。
"イノベーティブ・フュージョン"、"モラキュラー・キュイジーヌ" ...
↑何のことかさっぱり分からなかった私です。

イノベーティブ・フュージョンとは、フレンチとかイタリアンとか和食とか...
それぞれの伝統や文化に根差した食材や調理法にとらわれず、自由な発想で提供する新業態の料理店を指すそうです。
2013年ミシュランにも正式に登場しているカテゴリーなんだとか。

実は、先日うかがった神宮前の「Florilége」は、まさにこの"イノベーティブ・フュージョン"というカテゴリーに属すお店で、 斬新かつシェフの創意に溢れた11品の料理をコースでいただくスタイルでした。
毎年、想い出深いバースデーディナーを企画してくださる殿方が、今年はこちらのお店を2ヶ月前から予約してくださったのです。
好奇心旺盛な私にぴったり?!のお店です。

オープンキッチンで、大きなコの字型のカウンターテーブルにお客が約8組。
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(個室もあるようですがとにかくディナーは1回転のため)決まった数のお客様しか予約を一切受け付けていないそうです。
そのため予約困難なお店と言われており、 ちょうど2ヶ月前のこの日の朝10時に電話。見事予約を勝ち取ってくださったと聞かされたら、これはやはり感動しないわけにはいきません!

席に座ると、本日の11皿が書かれた紙が置いてあります。
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投影       ゴーヤ
継続すべき味   鰯
コンフィ     すっぽん
夏の予感     鮎
サスティナビリティー  牛
ヘテロ      牡蠣
和の風味     甘鯛
分かち合う    塊肉
旬        桃
異国情緒     マンゴー
贈り物      アマゾンカカオ
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これはなぞなぞ?それとも何かの暗号?
右が食材であるのはすぐわかりますが、左の言葉が深遠すぎます...
これは、お料理が運ばれてくるとその謎が解けるのです。

謎解きのはじめに、まずはシャンパン"Hugues Godme"で乾杯!
飲み物は、お料理毎にお店が選んだものをグラスでいただくペアリングでお願いいたしました。
お料理とお酒のマリアージュも本日のお楽しみです!
それではさっそくお料理とまいりましょう。


投影   ゴーヤ

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ゴーヤシャーベットの上に鯒がのっているという一口サイズの一皿目。
手でつまんで口に放り込むと...ゴーヤ独特の苦味はまったくなく、ひんやり爽やか〜


継続すべき味  鰯
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軽く炙った千葉県産の大羽鰯の上に「へしこ」を練り込んだパスタがのっています。
セルフィーユの香りとドライトマトの凝縮した旨みとがあわさって、匠の一品に。
あわせたワインは、フランスSancerreの"Ultimus Jean Thomas"。ヴィンテージは2013。
ソーヴィニヨン・ブランのフレッシュな味わいとお料理がすてきにマリアージュ。



コンフィ すっぽん
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非常に手の込んだお料理。ご一緒した方のレビューからの引用で解説させていただきます。
"スッポンの身はコンフィにされた後、香ばしいフリットとなっている。下にはスッポンの卵も加えたフランが敷かれ、柔らかく蒸し煮にされたエンペラの部分も添えられている。これに旨みたっぷりのスープが張られ、上には珍しいスベリヒユという野菜が飾られている。スッポンの味と食感を結集した一皿で、見事の一言。これに合わせる酒は、シェリー(銘柄は「Emilio Lustau」)で、アピシウスの名物である「海亀のスープ」を彷彿させる、出会い物とも言える相性の良さを実感。"


夏の予感   鮎
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こちらのお料理の説明も私には荷が重いので、レビューからの引用でご容赦。
"開いて骨を外した鮎の身に肝を挟んだものとフォアグラが、それぞれ網脂で包んでから軽くフライにされている。上には飯蒸しのようなもち米のリゾットが盛られ、油で揚げた中骨と、紅蓼もあしらわれている。フォアグラの程よい火入れと、鮎のワタの心地よい苦みが印象的。"

こちらの鮎料理にあわせたのは、なんと田酒。でも、これがお料理とぴったりなのです。
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サスティナビリティー     牛
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今の日本では、食品ロスがいかに多いかということについて解説された紙がお料理の前に渡されました。
こちらの料理に使われている牛肉は、子牛ではなく出産も終えた歳をとった雌牛なのだとか。
なんでも手に入り、ついつい当たり前のようになっている食事を、ちょっと違った気持ちでいただいてみます。
"ZIDARICH(ジダリッヒ)"という、イタリアフリウリの白ワインと一緒に。



ヘテロ    牡蠣
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牡蠣の旨みと、まわりの衣のオカヒジキがサクサクしていて食感もよく、美味しさが凝縮された一皿でした。レモンのメレンゲの酸味もよいアクセントになっています。このちょっと複雑な料理にあわせたのは、オーストリアの"Blaufrankisch Hochegg"という赤ワイン。
牡蠣は白という固定概念が見事に覆されたマリアージュに(◎_◎;)!




和の風味     甘鯛
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甘鯛の切り身を松笠焼きで仕上げた、和の一品。つきあわせに蕪のリゾットと芹のビュレが添えられています。日本料理にブルゴーニュのドメーヌ ロジェ・ラサラのプイィ・フュイッセ(Pouilly-Fuissé)をぶつけてくるあたり、やっぱりイノベーティブ。



分かち合う  塊肉
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本日のお客全員で分かち合うのが、上の写真のほろほろ鳥。
それぞれ順番にお客の前に置かれ、じっくり鑑賞させていただけます。
そして、取り分けられたものに、スナップエンドウの豆が添えられ、白ワインのエスプーマしたものがソースとしてかけてあります。
手前の黄色いものは、レモンパウダー。
ここで登場したのがGevrey Chambertin(ジュブレ・シャンベルタン)。
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ドメーヌはジャン・ラフェ・エ・フィス(Domaine JEAN RAPHET et FILS)。ヴィンテージは1996年。
ブルゴーニュの巨匠ジャン・ラフェが生産した素晴らしい赤でした。かのロバート・パーカーも最高の賛辞を与えたというほどのすごい方だそうです。
※2002年以降は息子のジェラール・ラフェが畑を受け継ぎ、ドメーヌもジェラール・ラフェと変えて現在に至るのだとか。

本日のコースはこのようにして最高潮を迎え、気分は大満足。お腹は大満腹。
(ちょっとお隣の殿方には内緒ですが...)このままごろ寝できたら最高な気分でした。



デザート一皿目。


旬    桃
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スポンジケーキと桃の上に桃のムースがかかったデザート。
桃って本当に素敵な香りがします。



異国情緒    マンゴー
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落花生のブランマンジェの上にのっているのが薄切りのマンゴー。落花生とマンゴーと個性的なもの同士の組み合わせが面白いと思いました。



贈り物   アマゾンカカオ
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チョコレート風のモノのまわりに赤紫蘇のジュレを纏わせた不思議なデザート。
未確認物質のような様相でも、目から鱗な味です。


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食後のコーヒーをいただきながら、ふと時計をみると3時間もの時が流れていることに驚きました。

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目の前で繰り広げられている大勢の料理人の方の一挙手一投足が、まるでエンターテイメント。
川手シェフは食の現代アート作家と言っていいと思います。
厳選した食材を、これまでにないような組み合わせで一皿に。調理法も、フランス料理の伝統的な技法だけではなく、和食の技法や最新の調理法を使ったり..と、自在に駆使。想像力の豊かさと、繊細でありながら大胆な味への探究心には本当に脱帽しました。

食事という体験を通じて、アートを五感で鑑賞させていただいた時間だったように思えます。
お連れくださった素敵な殿方に、心からお礼を申し上げます。
どうもありがとうございました。


↑これだけ書くのも、ちょっと大変ε-(´∀`; )でした

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このブログ記事について

このページは、Nancyが2016年7月22日 01:37に書いたブログ記事です。

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