今の彼女に弾けない曲はない! Yuja Wang

私はどうも力がでないなあ〜なんて脱力している朝などに必ず観るYouTubeがあります。
それは、Yuja Wangの「カルメンの主題による変奏曲」の3分ほどのライブ録画。
あれを観ると、最後一気にアドレナリンが放出されて、シャキーンとします。
何度見ても私に元気をくれるカンフル剤です。

さあ、今年最も楽しみなサントリーホールでの演奏会がやってまいりました。
前回YUJA WANGを聴いたのは、2013年の4月だったので実に3年ぶり。
ここ数年はオケとの共演で何度か来日していましたが、ソロリサイタルは久しぶりです。

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今年はどんな演奏になるのか!?

まず演奏プログラムが、チケット発売当初から数ヶ月前に変更され、
それもまた当日変更されるかもという、何が起こるかわからない状態...
たしか最初は、バラキエフのイスラメイがプログラムに含まれていたと思ったのですが、8月はじめに

【演奏曲目】
スクリャービン(Scriabin):ピアノ・ソナタ第4番 嬰ヘ長調 op.30
ショパン(Chopin):即興曲第2番 嬰ヘ長調 op.36
ショパン(Chopin)即興曲第3番 変ト長調 op.51
グラナドス(Granados):「ゴイェスカス」op.11(Goyescas op.11, Excerpts)から
ともしびのファンダンゴ(El Fandango de candil)
わら人形(El pelele)
***
ベートーヴェン(Beethoven):ピアノ・ソナタ第29番 変ロ長調 op.106「ハンマークラヴィーア」
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に決定したとの連絡が来て、へ〜と思っていたら、
この日の2日前に行われた横浜県立音楽堂に行った方の話しによると、なんと開始直前に場内アナウンスで前半がシューマンのクライスレリアーナに演奏曲が変更となったことが告げられ、会場に動揺が走ったとのこと。
その情報を聞きつけ、今回のチケットをとってくれた友人がすぐ私に連絡をくれて、
「明日どうなるかわからないよ...」と心の準備をさせてくれました。

彼女がどんな曲を選び演奏しようが、いっこうに構わないのです。
だって、彼女に会いたいから。
きっと驚愕の演奏会になるに違いないと予感できるから。
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ワクワクしながら客席で開演を待っていると、場内アナウンスで曲目変更の案内があり、やはりこの日もシューマンのクライスレリアーナの演奏となりました。
友人はシューマンが好きなので、実はちょっと嬉しそう。
やっぱりこの突然の予報に超満員の会場は一瞬どよめきました。

それが、超満員完売御礼なのですが、実はP席4列目以降がガラガラだったのです。
オルガン下のP席は何か訳があって売り出されなかったとしか考えられないのですが、全ブロック空席ならまだ理解できるのに、3列目まではお客さんが座っているのでちょっと謎めいていました。案の定、休憩中に席を移動してきてちゃっかり座っている人があちこち出没しましたが、会場スタッフに追い返されていました。それでも5人組の女性客が、係員の懸命の説得にもかかわらず頑として席を動こうとせず、結局後半居座っていて...
おばさんパワー恐るべし...です。
でも何であんなに席が空いていたのでしょうか?理由をご存知の方は、ぜひ教えてください。

さて、いよいよ開演。
ロングドレスでステージに登場。
シューマンの演奏、実に良かった!すごく大人の演奏をするようになったなあ〜と感じました。
身体が鍛え上げられたアスリートのように余分な肉のない人ですが、演奏にも無駄がない。
すごく鍛え上げられた音で研ぎ澄まされた感性の演奏。

前半の見事な演奏に会場から拍手喝さいが起こると、そのままなんとアンコールを2曲も弾くという驚くべきタフさです。
鳴り止まない拍手に、また袖からステージに出てくる時に左手に四角いものを持っていて、「あれ何?」とよく見るとiPadのような大きなタブレット。そのタブレットにいろいろな楽譜を入れているらしく、それをピアノの上に置きタブレットを操りながらの1曲目カプースチンを披露。カプースチンというジャズの要素も含んだテンポの速い難曲を、タブレットを操りながら弾くことのほうが、よほど難しいと思いましたが...。
シューマンの後にカプースチンが来るとは、まったく予想のできなかった事態です。(←時々カスプーチンとか怪僧ラスプーチンとかとこんがらがっちゃうことがあります。間違えていたので訂正しました。)

これで休憩かと思いきや、拍手が止まらないためまたステージに現れると、すぐに2曲目を弾き始めるではありませんか!
え〜?
ショパンのバラードの1番が静かにはじまりました。こちらは当然譜面なしの演奏です。
完璧に弾き終えました。
休憩に入ったのが8時半。

今日は長丁場になりそう..と友人と盛り上がっているうちに後半がスタート。

後半は、ここのところの彼女のレパートリであるベートーヴェンのピアノソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」。
恐ろしいぐらいの超絶技巧を朝飯前に弾きこなす彼女にとって、40分を越す超大曲を見事に弾ききって、会場からは盛大な拍手が鳴り止みませんでした。

その後のアンコール演奏が凄かったです。
とにかく7曲も弾いたのですから。
強靭なスタミナとレパートリー広さに、もう脱帽としかいいようがありません。
アンコール2曲目のプロコフィエフの戦争ソナタ第7番の3楽章をタブレット譜面見ながら弾いている様子なんて、信じられない曲芸技。猛烈な指さばきの合間にタブレットをタッチして譜めくりしていて、暗譜で弾くほうがよほど易しいのでは?と思うほどでした。
もしかして、アップルがスポンサーになっている?とか

カルメンの変奏曲の最後は、いつも体を思い切り反り返らせて、蹴るように立ち上がるのですが、昨日も見事なまでの反り返りで、あの鍛えられた体幹は実に美しい!

モーツァルトの編曲では雰囲気がガラっと変わって、遊び心満載の演奏。

得意なロシアものをはじめ、古典、ロマン派にも果敢にチャレンジし、現代曲、ジャズアレンジに至るまで、ドンドンいろいろな曲をタブレットも駆使し自分のものにしていく彼女のガッツ精神は、正直カッコよすぎです。
やはり、今日もサイン会に臨む決意をしました。
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「私失敗しないので」
大門未知子の名セリフが彼女にピッタリだと思っていましたが、今は「私弾けないものはないので」の方が似合いそうです。


日時:平成28年9月7日(水)
会場:サントリーホール 大ホール
演奏プログラム

《前半 衣装:カーネギーホールと同じロングドレス》

・シューマン:クライスレリアーナ Op.16

アンコール演奏
  ・カプースチン:変奏曲 OP.41
  ・ショパン:バラード第1番 ト短調 Op.23

===== 休憩 ========

《後半 衣装:ゴールドラメのロングドレス》

・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調 Op.106 「ハンマークラヴィーア」

アンコール演奏
  ・シューベルト(リスト編曲):糸を紡ぐグレートヒェン
  ・プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第7番 第3楽章
  ・ビゼー(ホロヴィッツ編曲):「カルメン」の主題による変奏曲
  ・モーツァルト(ヴォロドス/サイ編曲):トルコ行進曲
  ・カプースチン:トッカティーナ Op.41
  ・ラフマニノフ:悲恋(エレジー) Op.3-1
  ・グルック(ズガンバーティ編):メロディ

終了後、サイン会

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このブログ記事について

このページは、Nancyが2016年9月 8日 11:05に書いたブログ記事です。

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