音楽・アートとか

塩田千春展 魂がふるえる

6月20日から六本木の森美術館で始まった「塩田千春展 魂がふるえる」。国内では初ともいえる彼女の20年に及ぶ活動を網羅した展覧会には、嫌でも期待が高まります。さっそく足をはこんできました。

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塩田千春はベルリンを拠点に活動するグローバルな作家です。私が彼女の作品と初めて出会ったのは、確か2012年の大地の芸術祭の「家の記憶」という作品でした。一見なんでもない古民家に一歩足を踏み入れると、黒い糸で部屋の内部のあちこちが張り巡らされており、その絡まった糸の奥に家具や置物など、過去の記憶がまるで封印されているかのように存在する、という印象的な作品でした。

もつれた糸のインスタレーションは一種のトレードマークのような形で、2015年のベネチア・ビエンナーレの日本館では赤い糸の作品「掌の鍵」として発表されました。
残念ながら、それ以外の作品についてはあまり耳にする機会がありませんでしたが、今回は初期のドローイングや手がけた舞台芸術の紹介も含め、総括的にこれまでの足跡を紹介するというもので、彼女を知る上では大変重要な展覧会です。
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《不確かな旅》 2016年
《不確かな旅》2016年

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鮮やかな赤の毛糸が部屋の上空を覆う、大型インスタレーション。
糸は毛細血管にも見えてきます。
 

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《wall》2010年

体のまわりを無数に這うチューブ。赤い液体がそのチューブの中を流れていく様子が映し出されたビデオ作品。
中央に横たわっているのは塩田本人です。

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《外在化された身体》2019年
2017年の癌再発と闘病以降、塩田の作品に身体のパーツが使われるようになります。その背景には、治療のプロセスでベルトコンベアーに乗せられるように、身体の部位が摘出され、抗がん剤治療を受けるなか、魂が置き去りにされていると感じた経験があります。不在のなかに生命の営みの存在を感じてきた塩田にとって、身体を作品に使うことは、その不在を想像することなのかもしれません。(展覧会公式サイトより抜粋)


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塩田さんの作品には、「記憶」というキーワードがつきもの。床いっぱいに並んだミニチュアの家具や日用品。
それらが赤い糸で繋がっています。

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《静けさの中で》2002/2019年
焼けたピアノ、焼けた椅子、Alcantaraの黒糸
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作家の幼少期に、隣家が夜中に火事で燃えた記憶から制作されたインスタレーション。燃えたグランドピアノと観客用の椅子が、黒い糸で空間ごと埋め尽くされる作品です。音の出ないピアノは沈黙を象徴しながらも、視覚的な音楽を奏でます。(展覧会公式サイトより抜粋)

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《時空の反射》2018年
白いドレス、鏡、鉄枠、Alcantaraの黒糸

身体を覆う皮膚のように、ドレスは自身の内部と外部の境界を象徴します。そのドレスが黒い糸で埋め尽くされた空間に浮かぶことで、不在の存在を感じさせます。また、鉄枠に囲まれた空間を半分に仕切る鏡の両側にドレスが吊られていることで、虚像として鏡に映るドレスと反対側の空間に実際に在るドレスが、観る者の意識のなかで混在します。(展覧会公式サイトより抜粋)

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《内と外》2009年
古い木製の窓、椅子

1996年にドイツに移住し、現在はベルリンを拠点とする塩田は、ベルリンの壁の崩壊から15年後の2004年頃より、窓を使った作品を制作し始めました。当時ベルリンでは再開発が進み、多くの建物が取り壊されてゆくなか、塩田は廃棄された窓枠を集めて歩きました。窓はプライベートな空間の内と外の境界として存在しますが、東西ドイツを分断した壁も連想させます。《内と外》は2009年から制作され、いくつかのバージョンがありますが、本展では約230枚の窓枠を用いた作品を展示します。(展覧会公式サイトより抜粋)

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《集積・目的地を求めて》2014/2019年
スーツケース、モーター、赤いロープ

約430個のスーツケースが振動し続ける本作は、塩田がベルリンの蚤の市で見つけたスーツケースの中に、古い新聞を発見したことをきっかけに制作されています。あらゆる物はそれぞれの記憶を内包していますが、ここではスーツケースが見知らぬ人の記憶、移動や移住、あるいは難民として定住先を求める旅など、人生の旅路そのものを示唆しているようでもあります。(展覧会公式サイトより抜粋)

昔、古着屋で男物のジャケットを買ったことがあります。
家に帰って、そのジャケットを着てみたところ、内ポケットに名刺が1枚入っていました。
どうやら飲み屋のお姉さんにもらったとおぼしき名刺でした。
前の持ち主が誰か分かるはずはないのに、妙に名刺が生々しく、見知らぬ他人に親しみを感じました。
そして、持ち主を変えてきたジャケットの旅に思いを馳せたのでした。

《集積・目的地を求めて》は、そんな出来事をふと思い出させてくれました。
 

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