音楽・アートとか

第17回 東京音楽コンクール 本選

来たる8月24日、第17回東京音楽コンクール ピアノ部門の本選が上野の東京文化会館大ホールにて行われました。2次予選を通過した4人の若きピアニストによる演奏はどれも素晴らしかったです。中でも、4曲中技術、体力共に最も難曲といっても過言ではないプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番の演奏にチャレンジした21歳の秋山紗穂さんの力強い演奏は、もはや音大生の演奏というレベルを凌駕していました。

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初めてコンクールをリアルに体験する機会を得ました。と言っても、聴く側ですよ。

昔からこういう緊張する場所(演奏者の緊張でこちらの心臓がバクバクしてきそうな)は苦手で、行きたいとは思わなかったのですが、恩田陸さんの小説『蜜蜂と遠雷』を読んで以降コンクールなるものに興味を持っていたところに友人がチケットをくださり、渡に船。

本当は前の週の17日の2次予選も行くつもりにしていたのですが、前日公式サイトを見るとチケットは完売していて、当日券を15枚だけ1時間前の10:00から売り出すと発表。毎年このコンクールに足を運んでいる友人曰く、今までは会場もガラガラで当日いきなり行っても十分入場できたそうで、今年はちょっと残念がっていました。

本選は事前に前売りを買っていたので心配ありませんでしたが、自由席ということもあり、開場前すでに長蛇の列が出来ていたそうです。

本選に残った4人のプログラムは下記の通り。
1. 伊舟城 歩生さん
  S.ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 Op.18
2. 大崎 由貴さん
  M.ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
   ** 休憩 **

3. 秋山 紗穂さん
  S.プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 Op.16
4. 北村 明日人さん
  R. シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54
指揮は角田鋼亮氏 オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団

曲目がバラエティーに富んでおり、魅力的な曲ばかり。
最初のコンクールエントリー時に最終選考で弾く曲を(課題曲中から)選んでいるため、
同じ曲がかぶってしまうこともよくあるのだそうです。
でも今年は、4人すべてが違う作曲家という、聞く側にとっても楽しめる内容となりました。
友人曰く、コンクールでシューマンのコンチェルトが選ばれるのは珍しいとのこと。
私はこの曲の最後の盛り上がりが好きなので、4曲のフィナーレを飾るのにふさわしいと思いましたが
実は順番は抽選なんですね…
でもこの順番、抽選とはいえいい感じです。

4人とも学生さんです。
ラフマニノフを見事に演奏した伊舟城歩生さん。東京音大に在学中です。
お名前はなんと「いばらき あゆむ」さんとお読みするのだとか。珍しい苗字ですね。
初々しくて、緊張しているのがこちらにも伝わってくるようでしたが、大きなミスもなく、立派な演奏でした。
音楽性も豊かで、人前での演奏の機会が増えてくればきっとさらに飛躍しそうな気がします。

ラヴェルを演奏した大崎由貴さんは、ザルツブルクのモーツァルテウム大学修士課程在学の方。
ステージに出てこられた瞬間から、あ!ステージでの演奏に慣れているんだなということがわかる、
堂々とした立ち居振る舞いで安心して見ることができました。
演奏も堂々としていて、ラヴェルの世界観を上手に表現していたと思います。
ピアノソロが長い2楽章で、ぐっと聴衆の心を掴む演奏ができたら…というのと、オケが正直残念な感じの印象でした。

プロコフィエフの第2番。これは選曲からして、期待値ダントツでした。
この曲を演奏したのは東京藝大音楽学部在学の秋山紗穂さん。
プロコの第3番は度々耳にする名曲ですが、あえて難解な第2番を選ぶあなたは一体どんな方でしょう、という感じです。
なんと21歳の女性ですよ!
スタミナ、技量、いろいろな意味で、この曲にチャレンジする意欲がすごいです。
赤のドレスに身を包み、長い黒髪も素敵で、とても華がある登場。
演奏もダイナミックで、完成度が高く、(賞賛の意味で)音大生の演奏というレベルではまったくありません。
この曲をこれだけ見事に演奏されると、ぐうの音も出ないです。
危なげなところは微塵もなく、どちらかというとオケの方が大丈夫か?というぐらい緊迫した演奏が終わる頃には
間違いなくこの子が優勝するだろうなあ〜という手応えが残りました。

最後のシューマン。
これだけの演奏が続き、湧き上がる拍手を耳したらすごいプレッシャーだろうなあ〜
そんなトリに勇気をもって臨んだのが、北村明日人さん。チューリヒ芸術大学大学院在学の23歳です。
個人的には大好きなコンチェルト。
のびのびとしたいい音を出す子だなあ〜という印象です。
緊張のせいか、ところどころドキドキハラハラさせられる場面があるものの、総合的には素晴らしい演奏。
やっぱりこの曲の終わりで、私の気持ちもクライマックスになりました。

4人すべてがコンクールという大舞台で見事に力を出し切った素晴らしい演奏でした。
実にハイレベルな闘いに、このクラシック音楽という世界の頂点を目指す厳しさを見た気がします。

聴衆賞というのがあり私も一票投じ、審査結果を待たずに友人と食事に出ました。
その夜ネットで見たら、予想通り秋山紗穂さんの優勝でした。

ちなみに、秋山さんの2次予選のプログラムは、シューマンのピアノソナタ第1番と
プロコフィエフのトッカータだったそうなので、その選曲からして玄人っぽいですね。
入賞者のガラコンサートで聴いてみたい気がします。