音楽・アートとか

美しい偶然と意図(アール・ブリュット作家の作品同時展示) @国立新美術館

せっかく来た国立新美術館。ならば、他の展覧会も見ていこうと立ち寄ったのが「美しい偶然と意図」と題された展覧会。副題に「地域で共に生きる障害児 障害者アート展」とあるので、心身に疾患を持った方々の作品展のよう。
でも、そこには世界にも認められたアール・ブリュット作家たちの作品との出会いがありました。

DSC00197.jpg こちらの展覧会は、無料で公開。
 誰でも自由に入場できます。

 そんなこともあり、文化祭的なノリの素人の発表会の場かと思って気安く入ってみると、そこにはなんとも驚くような作品が展示されていました。先ほど見た、DOMANIもぶっ飛んでしまうほどのエネルギーを蓄えた作品がゴロゴロあるではありませんか…!?
 

 障害者の方々の中には、すごい芸術的才能を発揮される方がいらっしゃいます。
 その最たる方が、草間彌生大先生であることはあまりにも有名ですが…
  

 美術や専門教育を受けていない人が、独自の発想や手法で生み出した作品を「アール・ブリュット」と呼ぶそうです。

 今回、障害を持っている方がそういった教育を受けずに、秘めた才能や豊かな想像力で日々作品を作り、アール・ブリュット作家として認められていることに、この展覧会を通じて知りました。
 とにかく、この展覧会には驚くべき作品があります。
 昨今問題になった、津久井やまゆり園のような事件を考える時、この展覧会が提起し私たちに訴えかけるものの大きさは計り知れず、とても胸を打たれ私は感動しました。

 

その一つが、魲万里絵さんの作品です。
File 01

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魲 万里絵「あほがみるけつ」(2007)
魲 万里絵「あほがみるけつ」(2007)
魲 万里絵「多弁の口を止める薬」(2010)
魲 万里絵「多弁の口を止める薬」(2010)
魲 万里絵「寝盗奴メメントモリ」(2009)
魲 万里絵「寝盗奴メメントモリ」(2009)

作品から放たれる、性に対する混沌とした感情の爆発に、私は釘付けになりました。
モチーフがハサミとか、お尻や乳房、性器とか....そういうものが描かれているのに、ちっとも厭らしさといったものを感じません。逆にユーモアでもある彼女の絵には、実に不思議な魅力が詰まっています。

細かく緻密に書き込まれた文様からなる肉体のデフォルメや画面構成に、ただならぬ才能を感じずにはいられない作品。

家に帰ってからもっと魲さんのことを知りたくてネットで調べたところ、兵庫で個展をされているだけでなく、2010年パリで開催された「アール・ブリュット・ジャポネ展」にも出展され、日本だけでなく世界からも高い評価を得ている方なのだとか。
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ぜひ東京で大規模な作品展をして欲しいです!


魲 万里絵 Marie SUZUKI

1979年生まれ 長野県在住
2007年頃、現在の作品にみられるような絵を描き始める。


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File 02
澤田真一
土偶とも怪獣とも宇宙人とも見える、こちらの作品。
澤田真一さんという自閉症と知的障害を抱え、言葉もほとんど話さないの青年の作品なのですが、見る人に訴えかける力を持った作品としてはこちらも魲さんに負けずすごい!
不思議な生命体なのに、飄々とした表情をしていて、悪を感じません。むしろどこか可愛らしく、愛おしく思えます。
澤田真一
太古の日本人と何か通じる作品に思えます。現代人にはない感性は、作ろうとして作れるような作品でないことは一目瞭然。
だから、すごい。
 


彼のことも気になって、調べたら、なんと第55回ヴェネチア・ビエンナーレの出展作家にも選ばれ、世界的にも知られる作家というからビックリです。
「Shinichi Sawada」で画像検索をすると、ものの見事に彼の作品がズラッと出てきて、そのユニークな陶芸作品の人気をうかがい知ることができます。

澤田真一 Shinichi SAWADA

1982年生まれ 滋賀県在住
4歳になっても言葉を話さなかったことから、心配した両親が医師に診せると、自閉症と診断されました。
そのかわり、記憶力と手先の器用さは際立っていて、彼が紙で作ったものを見た周りは驚いたのだとか。
10代の頃に紙で作った車の模型は、車内のカーナビやドアポケットにささった新聞まで再現し、その緻密さは特別だったと言います。
滋賀県栗東市にある「栗東なかよし作業所」に通い始めて間もない平成13年、陶芸を始めます。
第55回ヴェネチア・ビエンナーレ(2013年)に出品。
スイスの美術館「アール・ブリュット・コレクション」に作品が収蔵されています。

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File 03
本岡 秀則
本岡 秀則
この作品、よく見ると電車の正面がひたすら描かれているのです。
見れば見るほど、一台一台が丁寧に描き分けられていることに驚愕します。


本岡 秀則 Hidenori MOTOOKA

1978年生まれ 兵庫県在住

以下は、ホームページにあった解説文より

‘コピー用紙や新聞広告の紙に小さな電車がびっしり。まさに「押し寿司」の米粒のようにギュウギュウ詰めに並べて描いてある。彼は知っている全ての電車を一枚の紙に描き、全てを一望したい、という願望を横溢させている。電車数の増加に伴い、紙はつなぎ足されているが、それでも追いつかず電車の圧縮度も徐々に増している。この絵はもう十数年間も続いており、絵は彼自身でファイルに整理し、毎日眺めている。
両親と共に自宅で暮らしながらホテルの厨房で食器洗いの仕事をしている。休日にはカメラ持参で駅に行き、電車の正面側写真を撮り貯めている。作品はアール・ブリュット・コレクション(スイス)での「JAPON」展(2008年~2009年)に出展され、同館にも収蔵された。また、パリ市立アル・サン・ピエール美術館での「ART BRUT JAPONAIS」展(2010年〜2011年)にも出展された。’


執筆者 ボーダレス・アートミュージアムNO-MA アートディレクター はたよしこ


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File 04
梅木鉄平
人工的に作られたものか、はたまた自然界から発掘されたものなのか、なんだかわからない物体。
作業所の片隅に置かれていたという、この作品。
誰かの手によって作られた人工的な作品?でした。
でも、何から作られたものかわかったら、それは凄いと言わざるを得ない。
なぜなら、こんな形にされることを想像だにもしていないモノだから。
本来の用途を失いゴミのようになってしまったモノが、不思議と崇めたくなるようなパワーを持つ。
そんな作品です。


梅木鉄平 Teppei UMEKI

無題 (2011〜2012)
セロテープ、小石

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File 05

《No Imgae》

残念ながら撮影が許可されておらず、写真はありませんが、辻さんの作品も独特な世界観をもった都市の風景を描いたもので印象に残りました。
興味がある方は、ネットで検索していだくと、ペンで描かれた都市の俯瞰図の作品がたくさんヒットします。
そちらをご連絡ください。

辻勇二 Yuji TSUJI

1977年生まれ 愛知県在住
架空の都市の俯瞰図を描き続けている。

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File 06

岡崎莉望 Marino OKAZAKI

こちらも残念ながら撮影が許可されておらず写真はありませんが、ボールペンで描かれた線の集積からなる作品には驚かされます。

【展覧会インフォメーション】
美しい偶然と意図
地域で共に生きる障害児 障害者アート展

2016年1月18日(水) ~ 2017年1月30日(月)
国立新美術館・1階企画展示室1E
東京都港区六本木7-22-2

 

【関連リンク集】
ボーダレス・アートミュージアムNO-MA http://www.no-ma.jp
アール・ブリュット巡回展 http://www.artbrut.jp/
スピリットアート ミュージアム http://www.spiritartmuseum.jp/