現代アートに敏感な私としては、展覧会情報や都内のギャラリー情報にはアンテナをめぐらして、時間を作っては足しげくまわっています。それでも、思いもかけない場所で好きなアーティストの展覧会が開催されていたりします。そんなカオス的都市が東京というところ。面白いなあ、とつくづく思うのです。
エスパス ルイ・ヴィトンを訪れた後、せっかく青山まで足を延ばしたのだから...と欲を出してちょっと界隈を散策することにしました。その一つがGYRE。1階がCHANELブティックの、黒のスタイリッシュなビルです。この2階にコム・デ・ギャルソンが提供するグッドデザインショップ、3階にMoMA Storeなどが入っていて、刺激あるデザインの商品や面白い雑貨に出会えたりするので、時間があれば覗くお気に入りの場所のひとつ。3階から2階と見てまわり、ふとエスカレータ近くのラックのチラシに目をとめると、な、な、なんと、名和晃平さんの作品展を3階オープンギャラリーで開催中との情報が...。吉岡徳仁さん、小谷元彦さん、名和晃平さんは、立体造形というジャンルにおける最も私の好きな作家さん達なのです。見逃さなくてよかった!と、はやる心を抑えて再びエスカレーターを上昇して会場へ。
名和さんといえば、CELLという概念をつきつめた作品を数々展開しており、なかでも動物のはく製をガラス玉で覆い尽くす「BEADS(ビーズ)」というシリーズ作品が有名です。
名和氏の言葉によれば「目の前に見えているものが本当にあるのかは不明確だが、ひとつひとつのビーズを覗くと、そのなかにリアリティが宿っている」。
2011年「PixCell-Deer#24」がメトロポリタン美術館に収蔵され話題となりましたが、この名作「BEADS」シリーズの「PixCell-Deer#35」の制作課程を見る事ができる展示がなされています。
制作途中の剥製の鹿のまわりに、グルーガンや脚立、マスク、大小さまざまなサイズのガラス玉が入った箱が積まれ、まるでついさっきまでここで作業されていたかのよう。貴重なアトリエの再現に、名和ファンならずとも、アートファンなら見逃せない内容です。
この他に、2013年6月19日、韓国のチョナン(天安)に設置された巨大彫刻《Manifold》。この1/30の模型も展示。
この他に、過去のアートプロジェクトの記録ビデオなどが見られます。
今回の展覧会「NAWA KOHEI | SANDWICH」は名和さんがディレクターをつとめるSANDWICHの活動を紹介するというもので、完成した作品を鑑賞する展覧会とは少し異なる性格のものです。
作品に独自の世界観を持ち、世界からも注目されるアーティスト名和晃平。
彼の作品のヴェールが剥がされた今回の試みは、興味深いものでした。思わぬ出会いに心躍る体験でした。
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