ゲルダ・シュタイナー&ヨルク・レンツリンガー

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GW後半初日の本日、
「Gerda Steiner & Jorg Lenzlinger
 Power Sources ー力が生まれるところ」を
見てまいりました。
場所は水戸芸術館現代美術ギャラリーで今月6日まで
開催しています。

大雨警報のなか、躊躇する気持ちと闘いながら、
行くなら今日しかないと意を決して出発。
朝8時台の東京駅発の高速バスに飛び乗りました。

東京から約2時間、足を運んだ甲斐がありました。
充実した展覧会。
そして偶然にも、東日本大震災で多大な被害を
受けた同館のパイプオルガンの復活を記念した
無料コンサートに遭遇し、素敵な演奏を聞くこともできたのです。

そんないい日のまずは
ゲルダ・シュタイナー&ヨルク・レンツリンガーの展覧会について
写真をいっぱい撮影してきたので、アップします。

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ギャラリー入口に向かう壁面の作品
Handy God (携帯電話の神様) 2008 彫刻

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ギャラリーを入って最初の部屋
1. Nursery(苗床) 2012 インスタレーション

小学校の机の上に台が置かれ、そこにはさまざまな成長に関係するものが
展示されています。中には、下の写真のような、参加型の作品も。

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発砲スチロールの球のまわりに苔のようなものが...

緑の部分は、尿素の結晶です。
来館者が柄杓でポリタンクに入った尿素液をすくって
上からかけてあげることにより、まるで植物のように成長していきます。
学芸員の方が展示当初の作品状態を写真で見せてくださいました。
その頃に比べ、おばけのように大きくなっています。

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これは、水の中で結晶を作る実験的インスタレーション。
水温調節が難しいらしく、連休に入ってからまだ一度も
結晶化にいたっていないのだとか。
上に吊ってあるのが、作家自らが水中で制作してできた尿素の結晶。
調子が良ければ1時間ぐらいで真ん中あたりのものが
できるそうです。

この他にも、LPレコードの上で踊るきのこ?や、盆栽風の作品、
様々な種子や実が並べられている机など、色々あって面白い。



2. Sweet Little Nothing(いとしいなんでもないもの) 
2012 インスタレーション
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暖簾のかかった小さな個室に入ると、テーブルの上に白い小皿と虫眼鏡と
手書きのメモが置かれています。

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小皿に乗った「いとしいなんでもないもの」は、豚の歯にデコレーションされたもの
だったり、シュレッダーにかけられたスイスの100フラン紙幣の断片だったり、
ピンクの粉(フラミンゴの羽で作られた?)や、 USBのキャップなど様々。
とにかく暗くてよく読めないのだけれど、紙に書かれた物語が興味深く、ついつい
じっくり読んでしまいます。
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個室の奥には棚が並んでいて、一段一段に下の写真のような
「いとしいなんでもないもの」がガラス瓶やプラスチック容器に入れられ
タイトルがつけられ展示されています。
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ミミズの心臓、鳥恐怖症の薬、パチンコの三角関係、ヤンキーのおなら...
ホントか嘘か、笑ってしまうようなアイテムもあります。

3. Lymphatic System (リンパ系)
2012 インスタレーション
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寝っ転がって鑑賞する作品。
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頭上にリンパ系を再現したようなインスタレーションが繰り広げられています。
よく見ると、チューブの中を液体が流れていたり、不思議な球体など、まるで、
体内にいるかのような錯覚を覚えます。昔、ミクロの決死圏という映画が
あったけど、あれを連想します。
寝心地も良くて、ずっと横たわっていたくなります。

4. Tear Reader (涙を読む人)
2012 インスタレーション

今回最も刺激を受けた作品。
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来場者の涙を採集し、涙の結晶を鑑賞するというインスタレーション。

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涙と一口に言っても、嬉しい涙もあれば、悲しみの涙あり、刺激を受けて
生理的に出てきた涙などさまざま。
そんな涙の結晶を顕微鏡で覗いてみたら...
そこには実に多種多様な形や色があるというのです。
まるで、一面花が咲いているような文様のもの。うっすら青い色が入った
珍しいものなど、学芸員さんがプレパラートを顕微鏡にセットして見せて
くださいます。
涙については、まだまだ研究面でも分からないことが沢山あるらしいのですが、
このインスタレーションについていえば、採取して1週間後ぐらいが見頃のピークで、
1ヶ月ぐらい経つと消えてしまうそうです。

5. The 4 Waters (4つの水)
2012 ドロップペインティング(滴による絵画)

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水戸市とその周辺から採取した水に異なる種類の鉄塩を加え、
それを一滴ずつキャンバスにたらして化学反応を起こさせた作品。
左から、袋田の滝、大子町の温泉、偕楽園(吐玉泉)、涸沼

6. Logic of Beauty (美の論理)
2012 ビデオ・インスタレーション(約20分)

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ブランコに座って鑑賞。

7. Lift-up (リフトアップ) 1989-99 写真
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ゲルダ & ヨルクの初期作品。旅先で出会った人々ゲルダが持ち上げ、
その瞬間をヨルクが撮影しています。ゲルダよりはるかに大きな人や
子供から老人...
様々な人との出会いの喜びが伝わってきます。
60点の写真が展示されています。

8. Microcosm (小宇宙) 2011 ビデオ・インスタレーション
真っ暗な部屋の中央にウォーターベットが設置。
プロジェクターで映し出されるミトコンドリアのような微生物の映像を
寝っ転がって鑑賞する体験型インスタレーションです。

9. Energy Fields (エナジー・フィールド)

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ドローイング9作品、コラージュ13作品の展示です。

10. Walking Bushes (歩く茂み) 2012 インスタレーション
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屋外の展示作品で、自由に移動できます。

本展覧会のためにゲルダとヨルクは水戸に1ヶ月以上滞在し、
制作しています。「いとしいなんでもないもの」「4つの水」
「涙を読む人」など、2人の被災地水戸復興への温かい想い
とも感じました。


おまけ++++
東日本大震災は水戸の地に多大な被害を及ぼしました。
偕楽園が今年2月にやっと開園されたニュースも記憶に新しいですが、
この水戸芸術館のパイプオルガンも壊滅的な被害を受け、
今年の4月再び演奏できる状態に復活したそうです。

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オルガニストの高橋博子さんとフルート奏者神田勇哉さんの
祝復活のジョイントコンサートがこの日、13時30分より行われ、
多数の来場者で1階のホールと2階回廊が埋め尽くされました。

無料のコンサートで、たまたま偶然聴かせていただくことができ、
本当にラッキーでした。
特に、スヴェーリンク「緑の菩提樹の下で」や
タファネル「アンダンテ・パストラーレとスケルツェッティーノ」など
あまり聞く機会のない曲が良かったです。
サン=サーンスの動物の謝肉祭の終楽章ちかくで
オルガン中央の☆の飾り?がくるくる回り出したのには驚きました。

神田さんはMCが大変上手で、演奏もトークも一流。
高橋さんともども、若いお2人にはこれからますますの活躍を期待したいと思います。

今日はあいにくのお天気だったけれど、
精神的満足度の非常に高い1日でした。

水戸芸術館 http://arttowermito.or.jp/

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このページは、Nancyが2012年5月 3日 23:40に書いたブログ記事です。

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