金曜日は閉館時間が20時の東京都美術館。現在開催中の「バルチュス展」は、没後初となる大回顧展ということで、会期が今月22日まで。あまり日にちもないので、大雨警報も出るなか、仕事帰りに出かけてみました。
生憎のお天気なので、普段であれば人で賑わっているであろう館内は、雨の音が聞こえるほど静か。
19時ちょっと前。
閉館まで1時間程度しかなく、1点1点丁寧に鑑賞するにはちょっと短い時間でしたので、見たいものを絞り込みながら鑑賞しました。
バルテュスといえば、少女をモチーフに描かれた作品がよく知られています。
今回の展示では、フライヤーやポスターでお馴染みの「夢見るテレーズ」(1938年)、「美しい日々」(1944-46年)、「読書するカティア」(1968-76年)といった、少女をモチーフにした主だった代表作が観られるだけでなく、晩年を過ごしたスイスのグラン・シャレのアトリエの一角をほぼ完全に再現したという展示が見物です。
奥様の節子夫人の協力により、生前愛用していた品々も数多く展示。
そのなかには、勝新太郎から送られた着物もあり、晩年(日本の)着物を好んで着用していたことなども紹介されています。
バルテュスという20世紀最後の巨匠を、さまざまな角度から見せてもらえる本展覧会は、非常に充実した内容と言えます。
私が非常に印象に残っている作品は、「樹のある大きな風景(シャシーの農家の中庭)」(1960)という風景画。1953〜1961年の間、フランスのシャシーという田舎町の城に居を構えていた時期に描かれた作品で、城館3階の窓からの風景をキャンバスにおさめています。芝生の光と影のコントラスト、後ろ向きの人物。遠くの山の幾何学的な描写...とても心惹かれる作品。
この絵の前で立ち止まった私は、ずいぶん長い時間観ていたように思います。
風景画で心惹かれるというのは、あまり多くはないのですが、この時の私の心情がこの絵と何らかのシンクロを起こしていたのかもしれませんね。
なかなか、これだけまとまったバルテュスの作品を観る機会はないので、
ぜひお時間があればご覧になられることをお勧めいたします。
東京での展覧会は今月22日まで。
その後は、京都市美術館で開催します。
公式サイトは http://balthus2014.jp/
ご興味のある方は、近藤達雄さんが書かれた「バルテュス全作品解説」という素晴らしいホームページがありましたので、こちらもご一読されると、さらに展覧会がお楽しみいただけると思います。
http://balthus-zinkaisetsu.com/
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