やっぱり来て良かった〜山口晃展 @水戸芸【前編】

5月中旬というのに、東京でも28度を記録した今週。
ふと気づけば、大好きな山口晃画伯の展覧会が今週末には閉幕。

会場が茨城の水戸ということもあり、少々出かけることに二の足を踏んでいた私ですが、4月26日夜のNHK日曜美術館『画伯!あなたの正体は?ドキュメント・山口晃』の番組を観て、無性に行きたい!と。
多数の新作。そして何より、作家本人がこだわりぬいた展示方法に、これは現地に行かねばきっと後悔する...そんな焦りから、会期終了前日の土曜日に行ってまいりました。
東京駅からJRの高速バスがとっても便利。泉町1丁目というバス停で降りて、歩いて2〜3分なのです。

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水戸芸術館の目印は、右の高い塔。
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黄色の旗が面白かったので、写真に撮っておいたのですが、
帰りのバスの中でカタログをペラペラめくって観ていたら、これも作品だったことに後になって気がついた次第。
「七人の侍」にでてくる旗を模したものだそうで、「◯」は自分が属したいもの、「た」は属している(た)もの、「△」が自分なのだとか。ちょっと映画を観ないと分からないなあ。

さっそく展覧会場に行ってみます。
同日なら何度でも再入場が可能というのが、なんとも大らかでいい。
東京の美術展は、(殊に人気のある展覧会に限って)再入場できないものが多いです。美術展って最初から最後まで一気に観ようとすると、けっこう足が疲れるのですよね。もうあまり若くないからかなあ。なので、途中まで観てちょっと食事やお茶でもしてまた体力を回復させてから、引き続きゆっくり残りを観て....そんな時間の使い方ができると、実に嬉しいのです。

さて、第1室に入っていくと、ベルトポールパーティションなるもので中央に通路が作られており、壁の絵には近づけないような展示になっています。どうやら「この部屋はざっとスルーしろ!」ということらしく、通路に従って部屋を進んでいくと、妙な仕掛けのゲートのようなものが現れました。これは順路に従って進むと、どうしても行きと帰りで人がクロスする箇所が出てくるため、その交通整理の役割をしているもののよう。
なんか、こういった仕掛けも山口ワールドっぽいぞ。

第2室は、壁を黒く塗られた細いコの字型の路地を進みます。この時点での作品は一切なし。

そして、第3室。
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基本的に会場内は写真撮影がNGなのだけれど、第3室のこちらの展示だけはOK。
「忘れじの電柱 イン 水戸」という作品。
2012年に銀座のメゾンエルメスで開催された『望郷』でも電柱作品を観たことはありましたが、今回は階段を上って細部を間近で鑑賞できるというおまけつき。
山口さんにとって、電柱は特別なモチーフです。そのことが写真と反対側の壁に絵と説明があるはずなのですが、順路からすると、まだ観ることはあたわず...それについては、また後で

続いて、第4室。
また壁を黒く塗られた細いコの字型の路地を進むのみで何もなし。

第5室に入って、やっと目の前で絵を鑑賞することが許される空間に案内されました。
とにかく山口さんの絵は、細部までしっかり観たい作品ばかりなので、遠巻きに鑑賞するのはストレスが溜まります(笑)。ホッとして、壁に近づきじっくり鑑賞です。
「14. ポータブルマン」・・・山口さんの着眼点にはいつも脱帽。
「16. ワールドアパートメント」・・・山口さんには珍しいビデオワーク!
「17. 前に下がる 下を仰ぐ」・・・今回のパンフレットにもなっている作品。カタログのコメントが笑える!
『展覧会のメインビジュアル用に描きましたが、旧知の先輩曰く「いく気がおきない」絵になってしまいました。悩みすぎるのも考えものです。現状報告と云った所です。』
ずいぶん辛辣なことを言う先輩ですねえ。
会田さんとかかなあ
「18. 日々のてならし」・・・まるで鳥獣戯画みたいなさらっとした筆描き。テレビ番組でも紹介していたけれど、これは1日の描き始めの準備運動のようなものらしいです。河鍋暁斎は観音様を描いたけれど、山口さんは自分の奥様と自分をモチーフに描いているのだそうです。そんな日々の手慣らし作品が多数壁に貼られています。筆の線が生き生き踊っていて、やっぱり山口さんは絵師だわと思う。ますます好きになってしまう。
「19. 食日記」・・・日付とその日食べた食事が墨で描かれた絵日記作品。
「谷中 Fや」「日暮里 川むら」とかお店の名前もあり、料理の感想も一言添えてあったりして、実に楽しい。
「20. 紙ツイッター」・・・今回一番笑えました!
SNSというツイッターを、なんと本物のノートでやってしまおうという発想。ありえない....
シニカルなつぶやきあり。自虐的なつぶやきあり。
日々ノートに一人綴るツイートに、いつしかフォロワーが1名。
奥様も参戦しての紙ツイッター。2/18 23:43を最後に、15ページに渡る紙ツイッターは終了。ぜひ続きを期待したいです。
他にも「大和撫子」「フール」といった作品がありますが、そろそろ次の部屋へまいります。

この第5室がどん詰まりで、こんどはいま通ってきた部屋にUターンして戻る仕組みになっています。

第4室(復路)

行きは通路しかなかったこちらのお部屋。ここには「日々のよしなし言(美術って)」という筆書きの漫画のような作品が展示されています。これから第1室の展示に向けての準備とか心構えのようです。

第3室(復路)
お次は、先ほどの電柱のある第3室です。こんどは、階段の方には行けず、壁伝いに電柱にまつわる作品を鑑賞。
「13. 自由研究(柱華道)」(2015)・・・・電柱の美について分析。これを読むと、電柱が愛おしく思えてくる。
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第1室(復路)
やっと第1室の絵画がじっくり鑑賞できるポイントまで来ました。
この部屋の作品は、大きめの油彩が中心。半分以上は今年完成したばかりの新作です。
中でも、「2. ショッピングモール」という作品は、山口さんを最後まで手こずらせた大作です。
展覧会がはじまってもなお、毎日閉館後山口さんが手を入れ続けたというこの「ショッピングモール」。130×324cmの大キャンバスには山口さんが育った桐生市の街が描かれています。中央に突如出現するショッピングモールは、かつて活気のあった商店街へのオマージュとも。

この部屋の作品はどれも見応えがあって、画伯の画力を見せつけられるのですが、その中でも「お〜」と思わず声を出しそうになったのが、「6. オイル オン カンヴァス(本歌 西本願寺 襖絵)」(2015)という作品。
真っ白のキャンバスにオイルで描いたという風景画は、照明を当てると油の艶で光る部分とそうでない沈んだキャンパスの白との対比で、絵が浮き上がって見えてくるというもの。実に幻想的で、見えて来る風景に奥行きがあり、素晴らしい。
山口さんの新境地なのか?


今回の展覧会について、作家ご本人のインタビューがありましたので、ご興味がある方はご覧ください。

そろそろ1時半にもなろうという時刻。
小腹も空いてまいりましたので、まだ2部屋を残しておりますが、一旦休憩。昼食をとることにしました。(再入場も可能ですしね。)

このブログ記事について

このページは、Nancyが2015年5月17日 03:12に書いたブログ記事です。

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