江戸庶民の味「ねぎま鍋」を味わった神楽坂の夜

江戸時代後期、江戸庶民の食だったと言われる「ねぎま鍋」。
葱と脂身の多い鮪のトロを醤油ベースの割り下で煮るお料理です。
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30代までは鍋料理を外食することはほとんどなかったのですが、この数年、「駒形どぜう」、日比谷の「一会」のあんこう鍋、京都「大市」のすっぽん鍋、浅草「三角」の河豚鍋、「中江」の桜なべ、神田須田町「ぼたん」の鳥すきやき、浅草「米久本店」のすき焼きなど、老舗から大衆的なお店まで、いろいろな鍋を体験する機会を諸先輩方からいただいて...
すっかり鍋の魅力に取り憑かれてしまった私!
今度は「ねぎま鍋」でしょ!

というわけで、神楽坂にちょっと知られたお店があるとのことで、数年前から行ってみたいものと思っておりました。 そのお店「山さき」のねぎま鍋は、その人気と季節限定なこともあって、なかなか予約が困難。以前一度トライしたものの、時すでに遅し...で、そのシーズンは見送るはめに。そんな私のもとに1月のはじめ、食い道楽な友人から2月10日に予約が取れたよ!というご連絡。
な、な、なんと嬉しいお誘い!
願いが叶いました。

この「山さき」というお店は、大塚にある「なべ家」と謂う、これまた有名な江戸前料理のお店で修行された女将さんがひらいたお店で、2007年「ミシュランガイド東京」の☆(1つ星)にも選ばれています。

毘沙門天の向かいの路地をはいったところの、雑居ビルの2階にあるこちらのお店。
初めての人は、ビルの入口にまず驚くと思います。ドアに紙がぺらっと1枚貼ってあるだけという、シンプルさ。
階段を2階にあがると綺麗で瀟洒なお店の入口に辿り着くのですが...途中は本当に雑居ビルです。
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お店の仕組みはいたってシンプル。電話予約の際に鍋のコースをあらかじめお願いしておくというもの。
なので来店したら、卓上にあるお酒のメニューから飲み物を注文し、後は待つのみ。
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秋田の「春霞」山廃本醸造を熱燗で。

初めに供されたお料理は、菜の花と白魚とぬたの酢味噌和えの小鉢もついた、写真のような盛り合わせ。
江戸前らしい甘く濃いめのだし巻きたまご。梅と鰹で和えた海苔、たらの芽の天ぷら、鯛の身のそぼろ、煮豆。
鯛のそぼろは、山椒がすごく効いていて、想像していなかった美味しさ。ちょっとしびれるような感覚が残る鯛そぼろと、ほんのり苦味のあるたらの芽、甘いだし巻き、梅の酸味がこれまた美味しい海苔、やさしい味の煮豆...
味のバリエーションに富んだ、工夫を感じる素敵な一品でした。


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つづいて、「ひらめの糸作り」。お醤油ではなく「煎り酒」をつけていただきます。
このあたりもすごく料理人としてのこだわりを感じさせます。

そして、いよいよ待望のお鍋に突入。
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大きなトロがまず目に飛び込んできて、期待は高まります。
同じ大皿には葱、わかめ、クレソン、せり、うどがのっています。
鍋はお店の方がすべて仕切ってくださるので、私たちお客はお酒をちびちびしながら楽しく写真など撮影。
まず醤油出汁の入った土鍋に、葱とまぐろを投入。
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しばらく経ってから、わかめが投入されました。
そし頃合いをみてお店の方がお皿に盛り付けて、それぞれの前に提供してくださいます。
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お皿に盛られた鮪の縞目の美しいことといったら...
まっさきに箸は鮪に向かいます。
一口入れて、あ〜幸せ。脂ののった鮪はやわらかく、極上の味。
熱々の葱もトロッとしていて、これまた美味しく、わかめもいい。
味のアクセントは粗挽き胡椒ひとつ。このシンプルさが鮪のうまみや素材とぴったり。

一旦すべての具材が鍋から姿を消すと、また鮪と葱が投入され、今度はせりの順です。
そうして、また2杯目が終わり、次は鮪と葱と独活の組み合わせ。
最後がクレソンといった具合。
ごった煮ではなく、それぞれ鮪と葱を基本に+1品追加で仕立てるすごく丁寧で上品な鍋なのです。

最後にご飯をよそってくださり、上からお鍋のスープをおかけて、お茶漬け風に。
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デザートは、あまおうときんつば。
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お店を開いた料理人の山崎美香さんをはじめ、スタッフは全員女性。
お揃いのエプロンに草履姿で、店内は和やかな優しい雰囲気に包まれています。
料理もそうですが、女性ならではのとても細やかな気配りで、とても気持ちのよいお店です。

材料やサービスを考えたら、お値段もとてもリーズナブル。
日本酒も結局2人で4合も飲んでしまいました。あ〜いい気分。

江戸の味にこだわってお店をオープンしたというお店は、これだけ飲食店がひしめきあう東京にあっても
おそらく僅か。そんな綺羅星のようなお店に伺うことができ、本当にいい思い出になりました。

夏の「相並(アイナメ)の梅干し鍋」も美味しそうです。

ぜひ江戸料理に興味がある方は足を運んでみてください。

山さき
ヒトサラの紹介ページ http://hitosara.com/0006023530/

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このブログ記事について

このページは、Nancyが2016年2月15日 11:41に書いたブログ記事です。

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