2016年5月アーカイブ

先週に続けて、今週も行っちゃいました。
今日は、青葉台にあるフィリアホール。
言わずもがなシャルル・リシャール=アムランのリサイタルです。
プログラムは前回のオペラシティと全く同じなので、
こうなると、もう追っかけだなあ私(笑)

前回のオペラシティでは2階右で、演奏の様子はさっぱり見えないという、ひたすら顔を見ながら、音楽に集中する感じでしたが、今日は最前列。
演奏会で最前列なんて、何年ぶりかしら。
最前列は音がいいわけではないんですけどね。
でも、今日は演奏の秘密となるペダルワークをしっかり観察するというミッションがあったので、大満足です。
演奏は、先週同様に素晴らしい。
そして、この世のものと思えないような美しい音色の秘密は、鍵盤とペダルの巧みな両プレイによるものであることを間近で目にし、すごく勉強になりました。
足踏みミシン並みにシフトペダルとダンパーペダルを操っているのには、本当にびっくりポンです。こんなにシフトペダルを細かく使っているんだ〜という感想です。青柳いづみこさんの評にペダルについて触れていたので、実はすごく気になっていたのですが、実際目にするとそのただならぬペダリングワークのテクニックにただただ驚かされました。
しかも、どう贔屓目に見てもフットワークが軽そうには見えないし...
オートマ車の運転を彼が両足でやったらすごく危険な感じがします。

このペダリング、曲の思わぬところでシフトペダルを使っているのも興味深いです。例えば弱音のトリルとか(初心者で想像つくようなところ)意外でも、ちょこちょこ踏み込んでいます。その法則は分析不可能で、本人のみぞ知る世界。

あと、今日のピアノがスタインウェイだったのは、良かったのか悪かったのか...
率直に言わせていただくと、音はオペラシティの方に間違いなく軍配が上がります。
コンサートでスタインウェイはあまりに聴き慣れているせいか、YAMAHAの温かく豊かな音色に、新鮮な喜びと感動を覚えたことも少なからず影響しているかもしれないのですが...
ホールの大きさとピアノがちょっとミスマッチ?
スタインウェイは音がキラキラ光り輝きすぎている感じで...今日は壁の反響音もちょっと気になりました。演奏を損なうものではけっしてありませんが、私はYAMAHAで弾く彼のショパンがたまらなく好きです。

というわけで、なんと生まれて初めてファンレターなるものを書きました。
ラブレターではなくファンレターです。
演奏会の感動を伝えたい...
これからもYAMAHAの演奏を聴きたい...
そんなもろもろの熱いメッセージをしたためたファンレター。

先週、演奏会仲間のTさんと休憩時間の立ち話で、(カナダ出身の彼に)気持ちを伝えるなら「フランス語でしょ!」と言われ、やっぱりそうだよなあ〜と納得。昨日の日曜日、ほぼ半日フランス語と格闘して書きあげました。
実にフランス語の辞書を開いたのは、十数年来です。
そんなことを一生懸命やってる自分が、とてつもなく可愛いく思えちゃいましたよ。

オペラシティではCD完売で、サイン会に並ぶ資格すら得られず苦渋の涙をのみましたが、今日は会場着いてすぐCDを購入。会場が小さいので、競争率は低かった?でも、終演後にはCD完売状態。お嘆きのご婦人方が大勢いらっしゃいました。

笑顔がとてもチャーミング。人柄の良さがビンビン伝わってきます。
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演奏会後、先日購入したパンフレットにサインをしていただき、握手もしていただき萌えました。小さくてすごく温かい手でした。
Fin

今日のプログラム 2016年5月30日(月):フィリアホール

ショパン:ノクターン ロ長調 Op.62-1
ショパン:バラード 第3番 変イ長調 Op.47
ショパン:幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
ショパン:序奏とロンド 変ホ長調 Op.16
== 休憩 ==
ショパン:4つのマズルカ Op.33
ショパン:ピアノソナタ 第3番 ロ短調 Op.58

《アンコール》
ショパン:英雄ポロネーズ 変イ長調 Op.53
エネスク:パヴァーヌ(先週と同じ曲)
※今日は演奏前に彼が
「ショパンのピースじゃなくてごめんなさい。すごく好きな曲でエネスクのパヴァーヌです」と英語で言ったのがちゃんと分かりました。
英語を喋ってる?昨日のフランス語との格闘はいったい何だったのか...
疑問符が頭をよぎった瞬間です...まさか

5月23日なんとも暑い日でした。

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今年1月の芸術劇場でのショパンコンクール・ガラ・コンサートのピアノソナタを聴いて、その演奏にすっかり惚れ込んでしまったピアニスト、シャルル・リシャール=アムラン。
彼の日本でのデビューリサイタルに友人を誘って行きました。

東京オペラシティの2階の最前列の一番端という席。
ステージの右真上という場所からは、演奏する手の動きはほとんど見えませんが、演奏中の顔の変化がつぶさに見え、時々みせるとてもチャーミングな表情を楽しめました。 一度目が合ってしまった(ように思えた)瞬間もあったりして...音もクリアに聴こえる、なかなか良い席でした。

とにかくどの曲も実に良かった!
想像を上回る充実した演奏。人生で忘れられないリサイタルの一つになること必須。
ときめきの余韻が今日も私を包んでいます。

ものすごく丁寧に音を紡ぐピアニストです。
右手と左手の妙技としか言いようがない音の掛け合いやバランスに、もうクラクラです。
若い演奏家なら煌びやかは表現をしそうな箇所を、彼の場合ちょっと控えめ。あくまで曲全体を俯瞰した上で、詩情豊かに歌い上げながらコントロールをしていることが伺えます。
なので、ワインで言ったらボジョレーヌーヴォーではなく、フルボディのボルドーといった感じ。まろやかで味わいぶかく、とがったところのない感じです。
それが、病弱で繊細だったショパンの面影と重なります。


ピアノはYAMAHAの最上位機種CFX。
アムランはショパンコンクールでも一貫してこのピアノを選んで演奏していましたが、この日も同じピアノでした。実は、リサイタルではスタンウェイの一人勝ちですが、ショパンコンクールではYAMAHAを選ぶピアニストの方が圧倒的に多かったのです。
リヒテルがYAMAHAを愛したのは有名な話しですが、現在世界の第一線で活躍しているピアニストがリサイタルでYAMAHAを採用しているというのは、残念ながら耳にしません。
アムランが将来にわたってYAMAHAを採用してくれたら、これほど嬉しいことはないのですが...。

まだ26歳だというのですから、これからが楽しみです。

サイン会があるらしいぞ!という情報を聞き付け、休憩時間中にCD売り場に行ってみると
人だかりで近寄ることすらできない状態。
そのうち、人垣が決壊したので覗き込んでみると、完売御礼!
演奏の反応はダイレクトです。

せっかくなので、記念にパンフレットを一部購入して帰ることにしました。
パンフレットごときじゃサインはしていただけないとのこと....残念なり。
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表紙はかっこいいタキシードですが、今日はごく普通の黒のシャツと背広姿でした。それにしても、ちょっと痩せないと健康が心配です。

ピアノソナタ第3番。1月のあの感動をもう一度。
感極まって?1楽章で拍手するお客さんがちらほら。それにもニッコリ笑顔で頭だけお辞儀。
なんか温かい人柄感じます。

アンコールは「英雄ポロネーズ」。
圧巻の演奏に拍手喝采。
2曲目、座って何か「ショパンの曲ではなくて、なんとかです。」みたいなことを英語で客席に向かって言ったのですが、あまりよく聞き取れませんでした。
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初めて聴く美しいメロディで現代曲っぽさも感じる曲。

まったく聞いたこともがないエネスコという作曲家の作品だそうです。
あまりの意外性にびっくり。まさか、ショパン以外の曲がアンコールの2曲目に現れるとは...4〜5曲もアンコールを弾いたなら、それも想定内ですが。
そして、大半の人が聞いたこともない作曲家の作品をぶつけてくるとは...
(一緒に行った友人は、名前は聞いたことがあると言っていました。それだけでも彼は真にクラシック通として尊敬に値します!)
エネスコはWikiによるとルーマニアの作曲家とのこと。同じルーマニア出身のピアノ講師に5歳から18歳まで師事していたそうなので、その影響でしょうか?
きっと彼のお気に入りの曲の一つなのだと思います。

シャルル・リシャール=アムラン
彼はどんな引き出しをもっているのでしょう。
カナダ出身のピアニストは、グレン・グールドやマルカンドレ・アムラン(同じラストネームですが親戚とかではないそうです)など、ちょっと個性的な演奏家が多いように思います。
彼がどんなピアニストになっていくのか、ウォッチャーとして楽しみであり、気になるところです。
各種コンクールなどで覇者となり、日々世界を飛び回る演奏生活の若きピアニスト達。
最近ちょっとそんな演奏家に対して、私自身は懐疑的というか心配しています。
十分自分自身を磨く時間も余裕もないまま、ひたすら演奏活動に追われてしまっているのではないか?
私には、その最たる犠牲者はユンディ・リに思えてなりません。
彼にはいっそしばらく演奏活動を休止して、自分自身としっかり向き合ってほしいと思ってしまいます。そして、しかるべき音楽的指導も受けるべきです。

話は逸れてしまいましたが、
アムランは、アンコールの演奏からも「我が道を往く」という姿勢が感じられ、実に面白いキャラです。
他の多くの人ように、そう頻繁に日本でのリサイタルはない気がするのは私だけかしら
個人的にはベートーヴェンの3大ソナタ、後期ソナタとか聴きたいところです。


エネスコ以外にどんなレパートリーを持っているのでしょうか?
モントリオール国際音楽コンクールではこんな曲を弾いています。
以下公式サイトhttp://music.cbc.ca/#!/play/artist/Charles-Richard-Hamelinより


QUARTER-FINALS

MARJAN MOZETICH "Tremblements: Hommage à Ligeti" / "Tremors: Homage to Ligeti"
JOSEPH HAYDN Sonate no 47 en si mineur/ in B Minor, Hob.XVI:32: I. Allegro moderato II. Menuet III. Finale: Presto
SERGUEÏ LYAPUNOV Douze Études d'exécution transcendante, opus 11: no 2 "Ronde des fantômes"
CLAUDE DEBUSSY Étude ''Pour les Octaves'', Livre I no 5
JOHANNES BRAHMS Intermezzo en si mineur / in B minor, opus 119 no 1
FRANZ LISZT Ballade no 2 en si mineur / in B minor S. 171 / R16

SEMI-FINALS
CLAUDE DEBUSSY Pour le Piano : I. Prélude II. Sarabande III. Toccata
ALEXANDRE SCRIABINE Sonate no 10 opus 70
FRÉDÉRIC CHOPIN Sonate no 3 en si mineur / in B minor opus 58: I. Allegro Maestoso II. Scherzo
III. Largo IV. Finale

FINALS

SERGUEÏ RACHMANINOV Concerto no 2 opus 18 en do mineur / in C minor: I. Moderato II. Adagio sostenuto
III. Allegro scherzando

スクリャービンのピアノソナタ10番やリャプノフといった
ロシアの作曲家の作品も弾いているのですね。




本日のプログラム All Chopin Program
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夜想曲 第 Nocturn in B major Op.62-1
バラード 第3番 Ballade No.3 in A flat major Op.47
幻想ポロネーズ Polonaise-Fantaisie in A flat major Op.61
序奏とロンド Introduction and Ronde in E flat major Op.16
========= 休憩 ============
4つのマズルカ 4 Mazurkas Op.33
ソナタ 第3番 Sonata No.3 in B minor Op.58

《アンコール》
1曲目
英雄ポロネーズ Polonaise No.6 "Heroique" in A-flat major Op.53
2曲目
エネスコ:パバーヌ(組曲第2番 Op.10より)


叙情的な美しい曲です。音源が悪いですが、作曲家本人の演奏をお楽しみください。

Charles Fréger:YOKAINOSHIMA

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映画「サンマとカタール」を観終わった後、せっかくなのでCharles Frégerの写真展をみてまいりました。

なかなか面白いしつらえの展示会場に飾られているのは、日本各地の祭事に見られる装束をまとった人の写真です。
これが思いの外、面白いのなんのって!
本当にこんな仮装をする祭りや神事があるんだなあ〜と、びっくりさせられます。
沖縄県宮古島塩尻のパーントゥなんて、全身泥づくめ。
鹿児島県硫黄島の八朔太鼓踊りのメンドンも、実に不思議な動物です。
日本人であっても知らない伝統文化がたくさんあるんだなあとつくづく思います。

Charles Frégerはフランス生まれの写真家。
一貫してポートレイトを取り続けており、近年は欧州各国の伝統的な儀式で獣の格好をした人たちを撮影した『WILDER MANN』というシリーズを発表。
今回の「YOKAINOSHIMA」は、2013年から2015年までの3年間に日本列島58カ所にて撮影されたもの。鬼や天狗、獅子、翁といった土着的な衣装をまとった現地の人を、その土地の自然をバックに撮影。92点展示されています。

残念ながら、私が伺った日が本展最終日でした。

公式サイト http://www.charlesfreger.com/

ヒューマントラストシネマ有楽町で上映中の
映画「サンマとカタール」のチケットをいただいたので、行ってまいりました。
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宮城県女川町は、東日本大震災の津波被害により住民の1割近くが犠牲となり、8割近くの住まいが流されました。
あの日被災した多くの市町村の中でも、人口比では最も激烈な被害を蒙った町が女川でした。
2015年3月、JR石巻線の「女川駅」が開通。そして12月には駅前商店街とプロムナードがオープンしました。
そこに至るまでの様々な住民の熱い思いを、本人の言葉やナレーション、定点観測の映像とで綴った復興のドキュメンタリーです。
人間の持つ可能性、人と人とのつながり、いろいろなことに胸を熱くさせられた映画でした。

なかでも、中東カタールからの温かい支援には、驚かされました。
カタールという国について、詳しく知る日本人はけっして多くないと思います。
震災直後、復興支援基金を立ち上げたカタール。カタールが現在のような経済発展を遂げるきっかけとなったノースフィールドガス田のLNGプロジェクトに、日本の企業が技術や資金援助をしたことが日本とカタールの友好関係のはじまりだったそうです。カタールでは、この時の日本企業の支援をいつまでも大切に思っており、日本の未曾有の災害を知り、いち早く「カタールフレンド基金」をたちあげ、総額1万ドル(約100億)の資金を提供。その最初のプロジェクトとして採用されたのが、女川の大型冷蔵冷凍施設「MASKER(マスカー)」の建設でした。

すべてを失い、絶望の淵にいた人々にとって、この「MASKER」は希望の灯になりました。
女川は日本有数のサンマ漁獲量を誇る漁業の町。震災により水産加工施設は壊滅的な被害を受けます。漁業の町として再興するために必要な施設こそ、この大型冷蔵冷凍施設「MASKER」だったのです。
このプロジェクトをカタールにプレゼンテーションした石森洋悦さん。
大型冷蔵冷凍施設さえあれば、必ずまた水産加工業者が女川に戻ってくる...
そんな石森さんの熱い思いと、かつてカタールが漁業で栄えた国だったこともあり、このプロジェクトが一番に採用され、20億円の資金援助を受けられることになりました。2012年4月から工事が着工され、同年の10月15日に操業が開始されました。
工期がたった半年という、驚異的なスピードで実現したMASKER。それは、サンマ漁になんとか間に合わせたいという地元の熱い願いと建設に携わった大成建設の所長らの苦労の末に実りました。

地元の若者たちが企画した「女川町復興祭」。
震災翌年からスタートしたこの祭りの実行委員長である淳さんを中心にカメラが追います。

「逃げろ!」の合図で高台に向かって一斉に走る「復興男」は、この復興祭の目玉イベント。
津波の教訓を忘れないために考えたアイディアです。

女川の須田町長は、巨大防潮堤を建設しないという決断をしました。
千年に一度といわれる津波の被害に遭い、更地になった土地に新たな町を作るためのグランドデザインを描くことは、将来にわたって大変な責務を背負う仕事。須田町長は、他の市町村が防潮堤を築いていったのに対し、海とともに生きてきた町の歴史をこれからも残すべく、海が見え景観に大きく影響を与える防潮堤は選ばず、その代わりに津波が来ても逃げられる、建物は失っても人命は失わない町を作ることを決めます。

いろいろな登場人物の「難しいだけで、不可能はない」が伝わって来る映画です。
上映中、涙が溢れてくるのは、私の席の見ず知らずの男性も同じでした。
ぜひ、多くの方に観ていただきたいです。
1日1日を大事に生きなくては...と本当に思えます。

上映は、5月27日(金)まで
ヒューマントラストシネマ有楽町
※1日1回(9:50〜の回)のみ上映なので、事前に調べてから足をお運びください。

3331 Art Fair 2016 つづき

Hogaleeさんの作品。

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なんとマスキングで壁に直に描いてます!剥がせば即原状回復!
これはすばらしいアイデアです!
ガムテープで駅の案内表示文字を作る佐藤修悦さんを思い出させます。


壁に直接マスキングテープで描く手法にいたく興味を覚え、知らず知らず食い入るように見ていたら、作家さんに声をかけられました。
しばし立ち話。

作品が生まれた背景とか色々お伺いして作品を見るのと、何も予備知識なくただ作品に向き合うのとでは大違い。
概して「言葉での説明は必要ない」というのがアートの基本的なスタンスだとは思うのだけれど、より作品との距離を縮めたいと思うならば、その作品の背景や作家自身のこと、テーマや思想などの情報は不可欠です。
作家ご本人とお話しできる機会というのは、めちゃくちゃ貴重な時間だったりします。

なので、Hogaleeさんの作品についてもお話しを伺うことができて、本当に来て良かったと思います。

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ジャクソン・ポロックやリヒテンシュタインといった現代アートの巨匠たちへのオマージュ的作品。

私は、マスキング作品に(自分自身の活動への応用も含め)異常な興味と想像力をかきたてられていましたが、
Hogaleeさんの作品に必ず登場するコミック風少女と作家との関係性が実はすごく面白かったりします。
これも、作家さんとお話しすればこそのネタ。

今後の活躍に注視です!

3331 Art Fair 2016で出会った2人の作家

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3331 Art Fair 2016が5月11日から15日までの5日間、開催されました。
69組の作家が出展する現代美術のアートフェアです。


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上の写真3点は、3331 Art Fairに出展されていた作品。

下の写真は、フェア会場の上の階(2階)のGallery KIDO Pressにて開催されていた同作家の展覧会。
余談ですが、このギャラリーはパーテーションの向こう側が版画工房になっていて、大きな版画制作用のPress機も置いてあります。
土屋さんの作品はすべてテラコッタ製(素焼き)。
水彩で着彩したり、釉薬を塗ったりして独特な質感や色調を与えています。
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おばさんの想像力をたまらなく刺激する、少年の像です。
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壁に掛けるレリーフのような作品。ついどうなっているのか横から覗いてみたくなりますが、布の下は見えません...
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遠くを見つめる静かな眼差し
こういう眼差し、ちょっと弱いです。
少年に萌えを覚える...
私もそんな年頃になりました。


・3331 Art Fair 2016 http://artfair.3331.jp/
・Gallery KIDO Press http://www.kidopress.com/

土屋裕介プロフィール
1985年 千葉県生まれ
2011年 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻 卒業


《展覧会》
2016年 「nowhere」Gallery KIDO Press 東京
2014年 「know」KIDO Press, Inc 東京
2012年 「Cozy Winter」DIC川村記念美術館付属ギャラリー 千葉  「gilding」KIDO Press, Inc 東京
2010年 「dreamer」ギャラリーせいほう 東京 
2009年 「アートアワードトーキョー丸の内2009」東京駅行幸地下ギャラリー 「your world」ギャラリー海 千葉

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チラシを見て、すぐに行かなくちゃ!と思った展覧会がこちら。

なんと写真撮影もOKとのこと。
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まるでアクリル樹脂に封じ込めたかのように見える金魚たち。
実は、アクリル樹脂に描かれた絵画なのです。
上は初期の作品。
よくある食品やお菓子の容器に樹脂を流し込み、その表面に金魚を描いているのですが、
金魚がまるで泳いでいるかのように立体的に目に映るから不思議です。

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取り憑かれたように、作品は何から何まで金魚です。
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中でも秀逸なのが、枡の中に金魚を描いた「金魚酒」シリーズ。
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「金魚酒 命名 美津島」(2010)
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「金魚酒 命名 紬」(2016)

制作工程を紹介するコーナーでは、DVDと過程の作品が展示されており、
非常に細かい手仕事であることが見て取れます。
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枡に樹脂を流し込むところからはじまります。
樹脂の表面にドローイング。そしてまた樹脂を流し込み、その上に描くという作業を繰り返し
何層にもわたる工程を経て、作品が完成します。
絵画が重層化することで、生きている金魚とみまごうようなリアルなものになっているのです。
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和傘や引き出しなど、あらゆるところに金魚の群れが...
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知らずに文机の引き出し開けたら、腰抜かしそうです。

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爽やかなガレの器もアートに...
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なぜ、ここまで金魚にこだわるのか...
作家と金魚との出会いがパネルで紹介されています。

金魚救い

 ある日、「ああ、もう美術なんてやめてしまおう。」と思った。
自室で、寝転がったとき、ベッドの横にあった小さな水槽が目にとまった。
そこには7年前に夏祭りですくってきた金魚が1匹いた。名前はキンピン(メス)。
たいして可愛がりもせず、粗末に扱ってきたため、水も汚れてフンまみれ、しかし彼女は生き続け、20cm以上になっていた。
僕は、水槽のふたを開け、彼女を上から見てみた。そのとき、僕の背筋がゾクゾクっとした。
汚れた水の中で、赤く光る彼女の背中は、怪しく、そして最高に美しかった。
「この子がきっと僕を救ってくれる。」
そう信じて、赤い絵具を取り出し彼女をモデルに筆を走らせた。楽しい!楽しい!楽しい!そして、あっという間に金魚の大群が生まれた。〈これだ!〉 
僕の探していた答えが、ヨーロッパでもなく、アメリカでもなく、まさにこの部屋にあった。
僕は、この日の出来事を「金魚救い」と呼んで大切にしている。

深堀隆介公式サイトからの抜粋



そんな金魚との出会い、そして樹脂に描く技法を編み出すまでの執念。
人間の可能性はどこでどう花開くか分からない。
だからすごく面白いなあと思いました。
ぜひ渋谷に行く機会があればお立ち寄りください。

まるで生きているかのような金魚達に、圧倒されますよ!

ここのところ大変だった一連の仕事も一区切りついて、ちょっと時間に余裕ができたので、さあ展覧会に!
というわけで、昨晩は仕事の帰り道「飯田橋駅」を降りて、MIZUMA ARTさんへ行ってまいりました。

現在開催されている棚田康司さんの作品展。何年も昔にスパイラルで開催されていた展覧会場で彼の作品を見て以来、すっかり好きになってしまった作家さんです。

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12のトルソ - No.8 少年になった木 あるいは 木になり始めた少年
マホガニー材、銀箔
2016
26.5×26.5×16cm

本展のタイトル「バンドゥン スケッチ」は、今回の展示作品13点のうち中央の等身大女性像を除く12点(「12のトルソ」)がインドネシアのジャワ島西部の都市バンドゥンに2ヶ月滞在して制作されているからだそうで、木材や道具類はすべて現地で調達し、モデルも現地の方なのだそうです。
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とても気に入った作品。優しい表情がなんともチャーミング。

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12のトルソ - No.1 不安少年のトルソ
2016
マンゴー材に彩色、銀箔
48×26×17.5cm

最初に制作された作品。現地で不安な作家自身が投影されている?

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これまでの棚田さんの作品とはちょっと趣の異なる作品もみられる本展。

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2ヶ月間で12体のこれらトルソを制作するって、はっきり言って凄いです。
約5日で1体制作のスピードです。

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面白い!

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背中に描かれているのは、モデルにあった刺青でしょうか?

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帰国後制作した等身大作品。

ギャラリーの方とお話しできたのも、実に楽しかったです。
とにかくバンドゥンでの2ヶ月の制作は苦労の連続で、最初に制作した作品「No.1 不安少年のトルソ」の寂しげな目の少年はまさに作家自身の心の顔でもあったようです。

まず現地の木を使っての木彫制作は、日本で使用していた木とはまったく違う材質。マンゴー材やマホガニーなど慣れない木は思うように扱えず、ずいぶん手こずったそうです。年輪が日本の木は均一なのに対して、こちらの木材は雨季と乾季の関係ですごく厚いのだそうです。そんな木の持つ特性は、慣れない彫刻家を悩ませたようです。

また面白い話しも伺いました。
バンドゥン滞在中のある日、大雨が降りみるみるうちに道路は冠水。外の景色は氾濫する川のようで、すごい勢いで水が流れていく様子が目に飛び込んだそうです。濁流にのみ込まれながら大量の土砂やゴミが流されていく。その様子を見ていてふと頭に浮かんだことが、「川はまるで女性のようであり、浮いているゴミは男だな...」と。これまでになかった、大人の女性を作品にしているあたり、どうやら女性の存在の大きさや美に作家が目覚めたのでは?という暴露話し。言われてみれば、そうなのかも。こういったエピソードをお聞きするのは本当に楽しいです。というのも、実は棚田さんは大学の1年後輩なんですよ!
そういう意味でも、応援してあげたい作家です。今週末のアートフェア東京のMIZUMAさんのブースでも出展されるそうです。
お時間があったら見に行ってみてください。

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展覧会:棚田康司 バンドゥン スケッチ
会期:2016/4/6(Wed)〜5/14(Sat)
会場:Mizuma Art Gallery - ICHIGAYA TAMACHI
東京都新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2F Tel: 03-3268-2500
開館時間: 火曜日から土曜日の11:00-19:00
休廊日 : 日曜・月曜・祝日

清川あさみ「ITOTOITO」

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GW最終日、久しぶりに現代作家の展覧会に行きました。
清川あさみ「ITOTOITO」。
表参道EYE OF GYREにて開催中です。
今年は彼女の制作活動15周年だそうで、今回の個展はすべて新作のみ。
清川あさみさんといえば、名和晃平さんと今年ご結婚されたばかり...
活動15周年とあわせて、人生においても新たなスタートをきり、
本当におめでとうございます。

作品は大きく分類して3タイプ。
「I:I」フライヤーのビジュアルイメージにもなっている、写真をプリントした糸からなる
作品。本や楽譜のページに糸で刺繍した作品「わたしたちのおはなし」。そして、ギャラリー入口に大きく飾られた、ファッションスナップを西陣織りで制作された大作「TOKYOモンスター」。

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ギャラリーに一歩足を踏み入れると、まずカラフルな書籍が目に飛び込んできます。
彼女が所蔵する文庫本や書籍、楽譜など100点に、刺繍という手法でドローイングした作品「わたしたちのおはなし」。
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こちらは、シューベルト「楽興の時」D780 Op.94
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一面縫い込まれておりテキストが読みづらいですが...
宮沢賢治の名作「銀河鉄道の夜」の蠍の火の物語のページ。
 『川の向こう岸がにわかに赤くなりました。楊の木や何かもまっ黒にすかし出され見えない天の川の波もときどきちらちら針のように赤く光りました。まったく向こう岸の野原に大きなまっ赤な火が燃されその黒いけむりは高く桔梗いろのつめたそうな天をも焦がしそうでした。ルビーよりも赤くすきとおりリチウムよりもうつくしく酔ったようになってその火は燃えているのでした。「あれは何おの火だろう。あんな赤く光る火は何を燃やせばできるんだろう。」ジョバンニがいいました。「蠍の火だな。」カムパネルラがまた地図と首引きして答えました。』

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山本周五郎「扇野」
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中央上段 井伏鱒二「山椒魚」。中央下段 与謝野晶子「みだれ髪」。
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谷川俊太郎「夜のミッキーマウス」
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萩原 朔太郎蝶を夢む
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ドビュッシー「月の光」
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モーツァルト「ピアノ・ソナタ(KV.281)」
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北原白秋詩集 邪宗門の「空にまっ赤な」
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お隣の部屋は「I:I」という作品シリーズ。
自ら撮影したインスタグラムの写真をポジ色、ネガ色として糸にひとつずつプリントしアクリルに閉じ込め、ネガとポジの写真にあわせて生み出した作品。虚飾に満ちた記憶や風景の裏側にある日常を、ネガとポジで表現することで改めてリアルというものを考えたものだとか。
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一つ一つにタイトルはありません。


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こちらは、90年代の東京のファッションカルチャーを振り返りつつ、個性というもの、コンプレックスというものの本質を探った作品「TOKYOモンスター」。2014年から発表している作品モンスターシリーズを現代版モンフターとして、デジタル化や情報化社会に生きる人たちの心情や現代風景の写真を全て糸で表現。西陣織の老舗「細尾」とコラボで制作されたもの。

この3つのシリーズはどれも、とても興味深かったです。
なかでも、「わたしたちのおはなし」は、私の琴線に触れるものがベースにあり、長い時間この空間で魅入ってました。作家は私よりずっと若いと思うけれど、何か同じ時代を共有した親密感を感じます。少し黄ばんだ文庫本に綴られている文章は、言い回しがひと昔の文語で、(私には懐かしいけれど)今の10代には古典すぎる表現?
糸による美しい色や形象のドローイングは、物語と相まってとても素敵でした。
宮沢賢治の本が無性に読みたくなりました。

演奏会が済んで、ほっとしている間にGWがやってきました。
この時期といえば、ラ・フォル・ジュルネ。
毎年ひとつぐらいは覗いてみたいと思いつつ、一度も参加する機会がないままになっていました。
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今年のテーマは「La nature」。
自然をテーマに繰り広げられる数々の演奏会。
1週間前にピアノソロはほぼ完売状態で、間際に購入できるプログラムはあまり多くなかったのですが、その中でちょっと面白そうだなと思ったのが227番「音楽の冒険 名曲とバードシンガーがいざなう森のファンタジー」というタイトルのもの。
バードシンガーという耳慣れない名詞にさっそく反応してしまいました。
ジョニー・ラス氏とジャン・ブコー氏の2人組で活躍されているそうで、
なんと、世界中の鳥の鳴き声を自在に操ることができるのだとか。
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曲はモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第28番、シューマンの「予言の鳥」、グリーグの叙情小曲集から「鳥」、ドヴォルザーク「森の静けさ」など。
これらクラシック曲とバードシンガーのコラボ、ちょっと気になります。
というわけで、友人を誘って夜9:00開演のこちらのプログラムに行ってまいりました。
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この2人組、鳥の鳴き真似が上手なんていう芸域ではなく、
ステージに登場した瞬間から歌手?であり俳優です。

まず一人が、空っぽの鳥かごを手に袖から登場。
その間、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタが粛々と演奏されています。
曲が終わると、客席の後方で羽ばたかせるバタバタという音が聴こえてきました。
両手にもって、大きな羽で風を切るように音を鳴らして現れたのが2人目です。
一挙手一投足がすごく計算された演技で、すごい緊張感が舞台を支配しています。
曲の間に鳥の掛け合いがあったり...
グリーグの「小鳥」では、演奏の途中に鳥がさえずります。
目をつむると、まるで森の中で音楽が聞こえているようです。
アンコールのサンサーンスの「白鳥」は、これが見事な音楽とのコラボレーション!
まるで2羽の白鳥が湖を漂っているように、2人がステージから客席にゆっくり降りてきて、
白鳥の声がサラウンドのように空間に響き渡るのです。
その幻想的な音楽は、まさに芸術。
会場から溢れんばかりの拍手喝さいでした。


なかなか臨場感を言葉で表現するのは難しいです。
Youtubeで彼らのステージの一部を垣間見れる動画がありました。

この動画を見ると、彼らの鳥のさえずりはもはやオーケストラの一つのパートのようですね(^o^)
Birdyphoniaという言葉があるようです。日本語に訳すとなんというのでしょう。
彼らのようなパフォーマンスがどんどん活躍していくのかも?
動向が気になります。

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曲目:
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第25番 ト長調 K.301
シューマン:予言の鳥(「森の情景」Op.82から)
ドヴォルザーク:森の静けさ(「ボヘミアの森から」Op.68から)
グラナドス:嘆き、またはマハと夜鳴きうぐいす(「ゴイェスカス」から)
グリーグ:小鳥(「叙情小曲集 第3集」Op.43から)
シューマン:予言の鳥(「森の情景」Op.82から/ヴァイオリンとピアノのための編曲版)
カザルス:鳥の歌
リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行
パールマン:小鳥は歌う
ロッシーニ:オペラ「泥棒かささぎ」序曲

演奏:
ジョニー・ラス&ジャン・ブコー(鳥のさえずり)
Jean Boucault et Johnny Rasse (Bird singers)
ジュヌビエーヴ・ロランソー(ヴァイオリン)
Genevieve Laurenceau (Violin)
シャニ・ディリュカ(ピアノ)
Shani Diluka (Piano)

Les chanteurs d'oiseaux Birdyphonia from chanteursoiseaux on Vimeo.

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